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リジェネレーション講座:Timbaktu Collective

Lush Spring Prize 2018 に先駆けて、昨年のLush Prize受賞者であるThe Timbaktu Collectiveを取材したレポートをお届けします。

干ばつが発生しやすい、南インドのアンドラ・プラデシュ州を拠点にするTimbaktu Collectiveは土地を再生する取り組みを行いながら、野生動物がその土地に戻ってこれるよう、またこの地域に住む人々が生計を立てる暮らしていけるよう、社会システムを立て直しています。25年にも渡る経験を活かし、成功を続けるこの再生プロジェクトは、野生動物の大切さ、われわれ人間が自然から学べること、そしてなぜこのような土地を守らなければいけないのかなど、多くのことを教えてくれます。

レッスン1:土地を再生することの重要性

「あなたは、オオカミ国に足を踏み入れているのです...」

Timbaktu Collectiveの生態・保護部門のディレクターを務めるSiddharth Raoは、Timbaktu Collectiveが手がけた土地の一つであるKalpavalliの山腹を運転しながら、日々野生生物を見守っています。Kalpavalliという土地は、9,000エーカーもの広さがある土地。この土地を再生したことで、崩壊寸前だった集落に自然を蘇らせることができました。

現在、ハイイロオオカミはインド全土でわずか2,500匹ほどしか生息していないと言われています。この再生された保護地区は、ハイイロオオカミの生息地の中でも最南端に位置し、現在2組のつがいが確認されています。多くの伝統的な羊飼いは、ハイイロオオカミと寄り添って生きることを学び、羊が何頭か食べられている事実を静かに受け止めています。人間とハイイロオオカミが共存し、そして彼らを効果的に保護することが大切だと考えるSiddharthはこう語ります。

「私たちは自然を大切にしていますし、これまでもずっと大切にしてきました。大切にしてきたからこそ、この大きな肉食動物たちは、10億もの人と生活することができています。それは、本来人には、自然を受け入れ、自然を尊重する性質が備わっているからなんです。私たちにこのような性質があることは、とても幸運なことでもあるでしょう。」

この土地を“ホーム”にする動物はオオカミだけではありません。運転しているSiddharthは直ぐに、グラスペレッティングと種を仕込んだ、どろ団子によって生えてきたサバンナの茂みに隠れているブラックバック(別名:インドレイヨウ)を見つけました。Kalpavalliのまわりを少し移動したところで、スズメヒバリ、クジャク、黒と白の羽のかんむりが特徴的なヤツガシラを見つけました。猛禽が周辺を飛びまわり、レオパード、蛇、トカゲなど他の動物は草原に隠れ紛れています。

25年前、この土地は干ばつと過放牧によって完全な荒廃地となっていました。土壌は白く変色し、丘の中腹では植物がなくなったために視界が広くなった土地をわずかな動物が歩いている姿がみられました。Timbaktu Collectiveは、地元のコミュニティの手を借りながら、この周辺の土地を再生しようと立ち上がりました。木や草を植え、人々は森林火災の対処法を学び、今では650ヘクタールもの大きさがある貯水池は、農業用の水を湛えています。

現在この場所には、ローズウッドやアカシア、そのほかの自生種が雑木林の中に堂々と立っています。中には猛禽類の巨大な巣を守っている木もあります。この土地にあるすべての木には、それぞれの物語があります。集められた種からはじまり、団体の中心拠点地であるTimbaktuの地にある苗床で育てられた木もあります。成長した木や種は、徒歩による5キロの旅を経て運ばれました。植えられた苗木には、人々の頭の上にバランスよく乗った壺から水が注がれました。赤ん坊や子どもも一緒にやってきて、さまざまな道具が丘を行き来していました。そして、この土地で暮らし、その土地で取り残されて暮らしていた人々も皆、土地を再生するためにあらゆる努力をしていました。

植物や野生動物を本来の自然の形に戻す活動を積極的に行った結果、自然は少しずつその力を発揮するようになりました。鳥が種を運んでいくのを見ながら、自然の進化に人間が介入しないこと、少なくともサステイナブルな方法で自然を活用することの大切さをこの地に暮らす人々は理解し始めました。

沢山の時間、そしてエネルギーを荒れ果ててしまった土地に注ぐことは、人によっては理解しがたいことかもしれません。しかし、Siddharthにとって、自然の世界を守るという行為は、彼自身が抑えることができない衝動なのです。

「若いときに観察することが好きでたくさんの時間を費やし、身の回りのことを観察したり、鳥、カブトムシなどを見たり、泳いだり、自然と触れ合ったりすると、その行動が当たり前になって、やめることができなくなるんです。でもこのような行動や意識があることは、自然こそが何よりも当たり前で、最も美しい物になります。こういった意識を一度持てると、他の選択肢なんて残されていない、自然を残したいと思う、ただそれだけなんです。なので私自身にもほかの選択肢はありませんし、他にできることもない。他のことをしたいとも思いません。」

再生された丘の頂上に立つと、25年もの間、土地再生に向けて重ねてきた努力が目の前に広がります。地平線に広がる美しい光景を見れば、誰もが自然の世界に心奪われることでしょう。今まで見たこともない鳥を見たり、近くで揺れる茂みを見て、レオパードやオオカミが潜んでいると今までは思えませんでした。ここは、私の暮らすイギリスのドーセット州から遠く離れた場所ではあるのですが、自分が都会に住むことができない理由を思い出させてくれます。

そして忘れられないのは、私がこの土地にたどり着くまでに目にしたことです。まもなく新しい工場が建つ広い土地では、建築工事が進んでいました。Kalpavalliでは、たくさんの風力タービンが地平線に広がっていました。イギリスでは環境に優しいエネルギーの象徴としてとらえていた風力タービンは、この土地では自然を脅かすものであり、恐れるべきものと言えます。この土地は開発から逃れることができないのです。地元住民が土地を守るためにたくさんの苦労をしてきた姿、取り戻すことができた豊かな自然を見てきた私にとって、とても悲しい光景でした。

Wind turbines, Timbaktu
Harvested paddy at the Timbaktu Collective

レッスン2:自然から学ぶ

Mary Vattamattamと Bablu(正式名はC.K Ganguly)は、パーマカルチャーデザイナーであり、この地域で取り残されてきた地元住民と長い間、土地開発を止める活動を行ってきました。積極的に活動を数年行った後、2人は問題の根本的な解決に取り組むことを決断し、活動内容を変え、長期的な変化を与えられるように努力をしました。アプローチを変えた結果として、持続可能な開発を目標とする非営利団体のTimbaktu Collectiveが誕生しました。

MaryとBabluは、地域の生態系を学ぶために努力を向けることを決断し、まだプロジェクトの初期段階だったTimbaktuの地を再生するためには、試験的な努力をたくさん行わなければいけないと考えていました。地元住民と生態系をつなげるための詳細な計画はなく、明確な答えがある人も一人もいませんでした。

「Timbaktuは私たちにとっての、”学びの土地”でした」と話すのはマリー。
「でもここは、すべての生命の基盤、例えば植物、動物、ハチ、蝶々、水、土壌の“生”があります。プロジェクトを始めた当初は、ここにはもう生命が残されていないと思っていました。でもそれは間違っていました。」

25年が経ったいま、MaryとBabluは、人、そして地球から沢山のことを学び、その中でも、自分について学ぶことができたと言います。Maryは、プロジェクトの初期段階では、たくさんの不安があったことから、時間を無駄にしてしまったり、計画が失敗になったときもすぐに心が折れたこともあった様です。「はじめに学んだことの一つは、地球には、信じがたいほどの再生の力が備わっているということ」とBabluは振り返ります。

自然を守りながらもちょっと距離を置いて、同時に手を差し伸べることをできたTimbaktu Collectiveの活動が結果的に、急速な、再生に繋がり、それを目撃することができたとBabluは言います。最初は21の植物種に始まり、今では400種類の植物がこの再生された土地で豊かに育つことができています。

土地と共に、地元住民の暮らしも豊かになっていきました。彼らは持続可能な方法で果物を採っています。ナツメヤシの葉は、バスケットやマットの素材として使われたり、多種多様な生物が暮らす農地へと変化していきました。キビや落花生、米などは農民の暮らしを支えるために収穫され、同時にコミュニティの食料として役立っています。蝶によって受粉が行われ、鳥が害虫を餌にし、人間の生活を守っています。自然と社会の繋がりが、今まで以上に明確になっていきました。

土地の再生を行いながらも、社会的・文化的なシステムも再生されていったとBabluは話します。
「宗教、カースト制度、社会階級、と沢山の要因がありますよね。なので、そのようなところから手を加え始めると、いかに人が分断されてきたかが分かります。私たちはそのような人々を一つにつなげようとしているのです。」

Timbaktu Collectiveを通して人生が変わった人はもう一人います。Neelakantaは2001年からTimbaktuの会計を担当していました。Timbaktuのミーティングに出席してきた中で、身近で起きていた有機農業を耳にする機会があり、インスピレーションを受けたといいます。この出来事をきっかけに、より積極的に自然と関わりたいと思い始めたのです。いまでは、植物や土壌の面倒をみて、さまざまな手法を試験的に試しています。ミーティングではなく、目の前で自分の成果を目の当たりにすることができているのです。Neelakantaは先週、実演有期農場で米を収穫することに成功し、Timbaktuの生態回復に取り組む試験農場用の堆肥を率先して作りました。

「1時間ごとに仕事が変わるのですが、毎時間その成果を目にすることができ、とてもダイナミックです。」と、MaryとBabluの娘(Siddharthのパートナーでもある)Mollyが英語に訳しながら、母国語のテルグ語で話すNeelakanta。

「リジェネレーションを基本的概念として捉えられなければ、この先に待つのは、困難しかないでしょう。」

Neelakantaは、Timbaktu Collective が一緒に活動する人々の可能性を広げ、沢山の人々をリジェネレーションの活動に巻き込みたいと考えています。Timbaktuは現在、最も見放された人々と一緒に活動していますが、将来的には、隅に追いやられた地元住民でも裕福な地主でも、すべての人々が一緒に協力し合えるような関係を目指していきたいと考えています。

Siddharthは、Neelakantaのような地元民が土地の再生のために活動を行っていることは、このプロジェクトの誇らしい点だといいます:「政府でもないし、組織でもありません。実際にある田舎町に住む見放された人々が、この地域を守っているんです。これは評価をすべき大成果でもあります。ほとんどの人は、共有地を守ろうという気持ちすらありません。」

レッスン3:土地を守り、保護するための戦い

Kalpavalli近くの高速には、モナコと同じ面積の600エーカーにも広がる工場が建設されています。このような動きがあることから、共有地が産業によって支配されることが危険視されています。Timbaktu Collectiveの土地が、いつどんなときも、土地開発から守られているとは限りませんし、産業開発がこの干ばつしやすい地域の繊細な生態系に及ぼす影響も不透明なままです。インドは現在、世界最大の工業国になることを目指しており、沢山の雇用を生んだり、経済的な利点を沢山もたらすとされています。しかし、このような開発が一度進むと、環境への影響は計り知れないものになるでしょう。

土地を守るために戦うことは簡単ではありません。Timbaktu は鉱山業などといった数々の業界から圧力をかけられてきました。Timbaktuで働く全員が、土地に自然を取り戻す利点を理解していますが、経済的な視点から考える人々にこのような考えが理解されないのが現実なのです。

Timbaktuが課題に面する中、地元民は土地を守るために絶え間なく活動を続けています。彼らは自然のために戦うしかないのだとSiddharth はいいます。「なぜ自分が正しいと思うのか?勝ちでも負けでも関係なく、やるしかないのです。合理的に見ると、敗者側にあることも多いです。でもそれでも私たちはやりつづけます。この土地は、何千もの人々にとって大切なもので、自然コミュニティーのライフラインでもあるのです。戦う以外、選択肢はないのです。」

25年もの間、MaryやBablu、そして彼らの同僚は、Timbaktu Collectiveで活動をし続けてきました。農業や生態系の再生、そして農家や女性の協同組合も誕生させてきました。ここで行っている景観への取り組みは、すべての土地でうまくいくわけではないとTimbaktuは認めます。しかし、自然と調和しながら共存するという観点では、世界はこの土地からたくさんのことを学べることでしょう。

Babluは、簡単なことですが、誰もが学べることが一つあるといいます:「シンプルに生きることはとても簡単なことです」

Timbaktuの創立当初、電力がなく、代わりにランタンをつかったと彼は説明します。手持ちの衣服もわずかだったので、洋服棚の必要もありませんでした。生活に存在する物質的な要素を少しずつ取り除いていけば、個人のニーズは徐々に減っていくと考えています。

献身的なコミュニティーから学べることもたくさんあります。再生された土地には、フェンスや、有刺鉄線は一切ありません。土地を守っているのは、そこに住む人々だけなのです。

「これは、他の人にとってインスピレーションとなるでしょう」とBabluは話します。

Timbaktu Collectiveの自然から人々が学び、恩恵を受けている中、Siddharth は最後に考えてほしいことがあるといいます:「野生動物の世界には本質的価値があります。人間にとって役立つものだけではなく、私たち同様に存在する権利があるのです。多様性は美しい。必ずしも’私たち’にとって価値がある必要性はないのです。」

「オオカミの国」に話を戻しましょう。Siddharthは、この大きな肉食動物を垣間見ることが出来るポイントを教えてくれます。再生された土地のおかげで、動物たちは新しい生息地を手に入れることができ、人間にとってもオオカミにとっても利のある場所といえるでしょう。オオカミはかつて、野原で獲物の群れを攻撃していましたが、いまでは自分たちの土地を冒険し、狩りをし、生息することができるようになりました。この土地では、動物は存在する権利があり、人と自然の間には尊敬の念が存在しています。

Timbaktu Collectiveは2017年度の Lush Spring Prizeの受賞者であり、Established Project Award部門で£25,000もの賞金を授与されました。Ethical Consumer Cooperativeよりコーディネートされている、2018年度のLush Spring Prize の応募は2017年12月10日に締め切られます。

画像 上から順に:Kalpavalliの再生された土地;再生土地近くの風力タービン;収穫されたばかりの水田

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