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The Lush Prize:動物実験に代わる生体機能チップ技術の進歩

化学物質の安全性試験(毒性試験)に使用される生体機能チップ(organ on a chip)技術は、近年画期的な進歩を遂げています。

“生体機能チップ”とは

化学物質の安全性試験(毒性試験)に使用される生体機能チップ(organ on a chip)技術は、近年画期的な進歩を遂げています。その名前から想像できるかもしれませんが、この分野で使われるチップとは、コンピュータやスマートフォンに使われるチップと類似するものです。ただし、これらの試験に使われるチップには、「マイクロチャンネル」と呼ばれるヒト細胞組織や体液が埋め込まれた超微細な中空管が埋め込まれています。検体はこのチップに注入され、実際の人体にどのような化学反応が起こるかを観測することができます。この洗練された技術は倫理的かつ、ヒト細胞を使っているため、より信ぴょう性があります。

肺や肝臓、心臓や肌などの臓器を模倣した一つ一つのチップは、細胞組織評価デバイス(Multiorgan Chips, MOC)に拡張され、複数の臓器機能をつなぎ合わせた人体機能を再現することができます。

開発が進む生体機能チップの事例

現在開発が勧められている最先端のチップの中には、心臓の薬物反応を観察するために心臓筋肉や血管細胞などの複合体構造が集積された「心臓鼓動チップ(beating-heart-on-a-chip)」と呼ばれるデバイスも存在します。他にも、呼吸や血液の変化、血流や空気の動きなど肺機能をシミュレーションする「肺機能チップ(lung-on-a-chip)」と呼ばれるチップでは、化学反応を観測できるだけでなく、肺がんなど病気の進行の研究も可能になります。最新の「人工胎盤チップ(placenta-on-a-chip)」は、妊娠期間中に使用される薬が安全かつ確実に効果をもたらすのかを観測することを実現化します。

その他の画期的な開発には、非常に複雑で繊細な化学物質が、脳と血流間をどのように動くのかをシミュレーションする“Brain-on-a chip”も挙げられます。これは、毒性試験における重要開発分野であり、人体への安全性の予測や評価をするために緊急性の高い開発分野です。

上記のチップは、ほんの数例にすぎません。技術の進歩は近年急速に進んでおり、高コストで信ぴょう性の低い動物実験に代わるこれらのデバイスは、科学の世界にセンセーションを巻き起こしています。

すべての化学物質の安全性試験のためには、さらなる進化が必要

科学研究に従事する多くの関係者は、生体機能チップは化粧品だけではなく日用品や医薬品を含むすべての化学物質検査の未来に革命を起こす可能性があると言います。

特に薬物検査においては、重要な過程だと言われています。臨床前試験とも言われる動物実験は、これまでずっと臨床試験前に実施されることが法的に義務付けられていましたが、動物の化学物質への反応は人体への潜在毒性反応と異って観測されることが指摘されていました。

臨床試験は高コストなため、より洗練されたアプローチの実現化は何百ドルもの節約につながります。一つの新薬の開発には200万ドルものコストが費やされ、臨床試験には何年もの時間を要します。その過程では、多くの動物の命が犠牲になるにも関わらず、新薬が人体にどう働くかを動物を使って完全に予測することは不可能でした。事実、新薬開発の中止や失敗は製薬会社にとって常に課題であり、人体にフォーカスした新薬開発は緊急に必要とされていました。

バイオロジーとテクノロジーの出会いと今後の進むべき道

今日存在する人体に関連した多くの技術進歩のように、生体機能チップも開発が進み、実用化に向けた承認プロセスが進められています。この分野における大きなニュースとして、医療品や食品の安全性認証を責務とするアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration)が、この生態系チップを新薬の臨床試験に使用する安全性試験への実用化に向けて、イギリスのバイオテクノロジー企業、CN Bio Innovationsと共同研究することを発表しました。また、ハーバード大学や、過去のラッシュプライズ受賞者であるTissUseなど、数多くの世界的な研究機関が、現在このチップの開発に関わっています。

画期的なアイディアにより開発が進められる生体機能チップは、非常に重要な技術開発へと発展を遂げました。それは、化学物質の安全性試験における動物の犠牲を激減させるからだけでなく、人体にとって、より正確に化学物質の反応を観測できるということが、何よりも画期的なのです。

人間と動物を守るための未来

動物実験の廃止を目指し、研究者や活動家を称えるLush Prizeは6年目を迎えます。2012年の設立以来Lush Prizeでは、ヨーロッパやアメリカ、アジア各国で、生体機能チップを含む動物実験代替法の研究開発に従事する研究者、にアワードを授与してきました。

Lush Prizeの目指すものや過去の受賞者については、Lush Prize公式サイトからご覧いただけます。

文責:Rebecca Ram,Scientific Consultant,Lush Prize

Lush Prize(ラッシュプライズ)についての詳細はこちら

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