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『コンピューターアルゴリズムが民主主義を脅かしている!』

ドキュメンタリー映画『コンピューターアルゴリズムが民主主義を脅かしている!』は、広告主がオンライン行動データを使い、ユーザーを操作しようとしている今日のデータ社会の問題をあぶり出します。この作品の公開に先駆け、本作品の監督のアデム・アイ氏がこの作品を制作するに至った真相に迫りました。

『コンピューターアルゴリズムが民主主義を脅かしている!』これはイギリスの映画制作会社Fat Rat Filmsが発表した最新の短編ドキュメンタリー作品名であり、彼らが発信した声明です。

オンライン上のユーザーデータを収集をする悪役はどこか愛嬌あるパソコン姿のモンスター。1950年代のホラー映画のシーンと専門家へのインタビューを交えながら、メロドラマ調のテイストに仕上げたこの作品の背景にはあるのは、世界中で大きく報じられたフェイスブック社とイギリスのデータ分析会社ケンブリッジ・アナリティカ社による個人情報の不正流用という、コンピューターアルゴリズムの複雑さが明るみになったビッグデータに関する問題です。

2018年3月、ケンブリッジ・アナリティカ社が掲載したフェイスブック広告のターゲティングに個人情報を使用したという内部告発があり、この広告が2016年の米国大統領選挙とイギリスの欧州連合離脱の是非を問う国民投票という2つの大きな選挙の投票結果に影響した可能性があるとして、米国連邦取引委員会と英国議会委員会による調査が2018年5月現在も続いています。この複雑なテーマを扱うため、リサーチに1年を要した本作品の監督、アデム・アイ氏は、これは大規模な社会問題に発展すると言います。

「マーケティング担当者がソーシャルメディア上に蓄積された大量のデータにアクセスすれば、どれだけ巧みに政治マーケティングを行えるかをこの作品は描いています。オンライン上のユーザーデータの扱われ方、民主主義とプライバシーについて考えるきっかけとして、この作品を制作しました。」

ケンブリッジ・アナリティカ社とフェイスブック社の個人情報の不正流用問題には世界が注目しており、Fat Rat Filmsが本作品の制作を始めた時には、このテーマがここまで世の中の注目を浴びるとは想定していませんでした。これほど大きなニュースになっているのは、何百万人ものフェイスブックのユーザーが自分のデータも不正に使用されたのではないかと当事者意識を持ち、フェイスブック社がにわかに批判を受けたからだと彼は考えています。

「まだ何も証明されていませんが、このことについては多くの調査が行われています。ただ、こういったユーザーデータの使われ方は、長年知られていたことでもあります。」

--Uncovering the data story ユーザーデータを暴く

アイ氏は、スイスの雑誌Das Magazinのオンライン記事を読んで、この作品のアイディアを思いついたそうです。

「その記事は、世界中の政治世界で起きている奇妙なことは全て、ユーザーのマインドを読み取るテクノロジーのせいだとほのめかしていたのです。」

このようなテクノロジーがあれば、フェイスブック上のデータから個人の特性を分析することができ、ある人がどの投稿に「いいね」をしたかというデータによって、政治観や性格を関連づけることが可能になります。

「何の変哲もない情報から、驚くほど多くのことが分かります。フェイスブックのアカウントを持っている人は、その情報を広告主に売ることもできるのです。」

こうしてユーザーデータを手に入れた広告主は、無党派層に響くようなメッセージを作ることもできると、ケンブリッジ・アナリティカ社の元従業員で、本件の内部告発者は言います。そこでアイ氏が疑問に思ったことは、なぜこのことを多くの人が知らなかったのかということでした。半分冗談だと言いますが、次に彼が疑問に思ったことは、このテクノロジーによって世界が全体主義のファシストによって支配されてしまうかもしれないことでした。「過剰反応だったかもしれない」と話すアイ氏ですが、全体主義政府がデータを利用し、対立する政治観、信仰や性自認など特定の社会集団を探し出し、迫害するために使用されることなど、個人情報流出が引き起こす被害が大きくなることを危惧しています。

「ある特定の個人や集団に危害を加えたり、リアルな形で誰かの人生に影響を与えるために情報を利用することも考えられます。だからこそ、これは恐ろしいことです。規制当局のチェックが必要ですし、企業にも責任はあるでしょう。」

リサーチと撮影を通して1年近くこのテーマに触れていたアイ氏は、本作品に登場する専門家の全員が、広告をクリックすることでアルゴリズムが選挙やマーケティング、ビジネスに影響することをインタビュー中に口にしたことに驚きました。このスキャンダルの中心にはアルゴリズムの絡んだ網に飲み込まれた金、汚職、外部からの影響があるからこそ、「扇動的な利益を生み出すことを狙ったビジネスの側面が変わらなければ、物事は変わらないでしょう」と話します。

「状況を良くするには、激震的で革命的な変化が必要なのです。」

--ビッグデータとどのように付き合っていくか

『コンピューターアルゴリズムが民主主義を脅かす!』は何が原因で現代の社会がおかしくなっているかを伝え、このテーマに興味を持ってもらうことを目的とした作品であり、ケンブリッジ・アナリティカ社を批判するために制作されたものではありません。アイ氏は何度か同社代表へのインタビューを試みましたが、実現しませんでした。代わりにこのテーマについての議論を広げる別の解釈を持つ人たちを探しました。

アイ氏は日頃からソーシャルメディアとそこで収集されるデータ使用に対して疑念を抱いているからこそ、フェイスブックのアカウントを持ったことはなく、本作品の宣伝にはツイッターしか使用しません。それでも本作品が描くアルゴリズムモンスターの危機を逃れたとは思っていません。

「インターネット上にいなくても、ビッグデータから逃れることはできません。ビッグデータはあらゆるエンジンを動かす燃料源のようなものです。データというのは、ソーシャルメディアからのみ収集されるわけではなく、テレビで視聴した番組、ポイントカードの利用状況など様々な場所から収集されています。この世の中でタダに思えるものは、実際にはタダではないということです。」

最後に言いたいことは何かと尋ねると、「この映画は今までもこの先も、皆さんに、そしてこの世界に影響を与えるテーマを扱っているからこそ、ぜひ多くの人に観てもらいたいと思います」と言った後に、もう一つ大切なことを言い添えました。それは、テクノロジー自体が悪いわけではない、ということです。テクノロジーは中立的なもので、社会に必要なことのために使われることもあります。問題は、私たち人間がそれをどう活用するか、濫用するか、ということなのです。

『コンピューターアルゴリズムが民主主義を脅している!』は、 The Lush Film Fund の助成金を受けて完成した作品です。全編は2018年5月25日からこちらのページからご覧いただけます。

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