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推進派も反対派も関係ない「ふるさとが好き」な人々が切り開く未来

原発問題”と聞くと、推進派と反対派で真っ向から対立する構造を思い浮かべるのではないだろうか? 議論は平行線をたどる一方にも関わらず、この国にはまだ新規原発が建設されようとしている町がある。“原発建設問題”で生まれてしまった、分断を乗り越え、推進派と反対派の垣根を越えた取り組みが始まっている。彼らをつなぐこととは、まさに「ふるさとが好きな気持ち」だった。

 「人殺し!」

 これは、今も原発建設の予定がある長島で自然保護・反原発の運動を続けてきた高島さんが、建設予定地にほど近い四代地区の漁師さんにかけられ、自身の上関移住のきっかけとなった言葉だ。当時、高島さんは防府市に住み、そこで生活基盤を持っていた。

 高島さんは優しい笑顔でこう話してくれた。「確かにそうだ、って思ったんよね。上関で暮らしている人からしたら、よそで暮らしてるあんたなんかに、自分たちの辛さはわからんと。これは、自分がこの町に住んで原発がなくても豊かに幸せに暮らせることを証明せんといけんと思ったね。」

 自然保護の必要性を訴えるだけではいけない。そこで暮らす人々の立場に立って、地元住民のエンパワメントになる、より広域な活動のスタートのきっかけでもあった。

 それまで高島さんは上関の自然を守る会として、上関の地域、主に海に住む生物と鳥の保護のために活動してきた。団体としての活動は継続しながら、新たに自然、特産品や人々の暮らし自体を地域の魅力とし、全国への発信と未来への継承を目的としたプロジェクトを始めた。このプロジェクトの大きな特徴は、関わる人に原発推進・反対の立場を問うていない点。なぜ意見の違う人たちが共に行動するのかと、疑問に思うかもしれないが、彼らには「生まれ育った上関が好き」という共通点がある。

 高島さんはこう話す。「上関の自然を守る会としての立場は明確。私たちは今までもこれからも原発に反対。でも、だからといって推進派の人々を全否定するだけでは、未来に何も残せない。推進派の人の中には、生まれ育った上関が大好きな人もたくさんいるんよ。共通してる部分は一緒に頑張ればいいと思った。」

 広島県出身の高島さんは、“よそ者”だからこそできることもたくさんあると言う。「東京の人たちとつながりができて以来、全国各地からたくさんの人が上関に訪れるようになった。町には少ない若い人や子どもが目をキラキラさせて、上関の自然や人の暮らしに触れて楽しんでいる様子を見て、地元の人も変化してきている。私に『何もない上関になんで越してきたんだ?』と言っていたおじいちゃんが、最近は自慢げに『やっぱ自然はいいよな!』なんて言ってね。みなさんのおかげで地元の人も笑顔になる。」

 町には、生まれも育ちも上関という人も少なくない。そんな彼らにしてみれば、目の前に広がる自然は当たり前の光景で、“誇れるもの”という認識が全くなかったのだろう。「何もないところに原発を作ってなにが悪い!」という声が上がるのも無理ない。だから私たち“よそ者”が、上関に訪れ楽しい思い出を作ることが、地元の人が上関に誇りを持つきっかけになるのだ。

 それにしても、不思議なことが一つある。広島駅からさらにローカル線と路線バスやフェリーを乗り継がなくてはならない辺鄙な場所にも関わらず、上関に一度足を運んだ人は、必ずと言っていいほど再び訪れる。「不思議と、初めて来た人がなんか懐かしい、ホッとする、と言って、穏やかな表情になってくんよ。」と、高島さんも話してくれた。上関の自然、山や海の自然と調和した暮らし、村社会ならではの人々のつながり、整っていないインフラや、一見不便な生活が、訪れる人に安らぎを与え、“人間らしさ”を取り戻す時間になっているのではないかと思う。誰もが心を寄せることができる第二のふるさと、上関に、これからも多くの人が足を運べることを願う。

 

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■ラッシュでは2018年5月18日、山口県熊毛郡上関町の自然環境を守るために原発計画に反対する緊急署名キャンペーンが始まりました。

 

 

 

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