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福島・いわき 再生と未来への想いを乗せて咲く備中茶綿の花

日本には古来より、平安時代から伝わる在来種の和綿「備中茶綿」という珍しい品種があります。2011年の東日本大震災以降、福島・いわきでは、この土地と人々の再生への願いが込められた綿花が、今年も花を咲かせました。
 

■福島の再生、その未来への想いを乗せてスタートした「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」
2011年に起こった東日本大震災の後、復興活動とともに市民自らが市民のために行う地域作り、そして復興への想いや未来ビジョンを共有し、より多くの人の輪を広げていく活動に取り組むために福島・いわきの地で企業組合「おてんとSUN」は設立されました。その活動の一つが、有機栽培で綿花の収穫を行う「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」です。

東日本大震災で被災した地域について、津波の被害や、原発事故による環境被害がメディアでも連日大きく取り上げられ、実質的な被害と、そこから沸き起こる風評被害からの地道な復興活動は6年経つ今も続いています。
津波による被害は、大切な人の命や住居、家財道具が流されてしまう甚大なものですが、津波が引いた後の農地に高濃度の塩分が残ってしまう「塩害」も深刻なものでした。塩害を受けた農地では農作物が育ちにくくなるのですが、綿花は塩害に強く、すぐに栽培が開始できる農作物でした。そこで数ある綿花品種の中から、他の地域では栽培していない珍しい希少価値を持つ備中茶綿を選び、土を汚さない有機栽培(オーガニック)によって収穫し、製品化・販売までの一連に取り組む「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」がスタートしたのです。

■和綿の特徴
和綿は、白い洋綿と比べると布製品に仕上げるには工夫と技術が必要です。
まず、紡績。和綿は繊維が短く、紡ぐのが難しい品種です。ですが弾力があって強い性質があるので、上手く紡げば和綿の糸や生地は丈夫に仕上がります。その方法として、おてんとSUNは和綿に洋綿をミックスしています。茶色がかった弾力のある和綿と、白く柔らかな洋綿を混ぜて紡ぐことで、見た目にも美しい生成り色の綿糸となり、肌触りの良いしなやかで丈夫な綿生地が出来上がるのです。
そして、色味。もともと白い綿だと染める時に、染めたい色が出しやすいですが、茶綿の場合は布地に入る薄茶色を考慮して発色を計算して染色や、塗色をします。しなやかな和綿は油分を含んでいるので、なかなか染まりにくいという特徴もあります。染まりにくく、色の発色が難しい。そんな和綿ですが、和綿が持つ本来の色味に色を乗せると、ただ真っ白なキャンバスとして絵柄を乗せるのとは違って、和綿の上だからこそ現れる何とも言えない奥ゆかしい柔らかな風合いが生まれるのです。

■おてんとSUNがオーガニックにこだわるワケ
おてんとSUN 吉田さんはこう語ります。
「実は、栽培時にコットンほど農薬を使っている農作物は無い、と言われるているのが現実です。コットン農家がその農薬によって病気になってしまうことがあるほど本来は農薬が多用されます。そうして作られたコットンがみなさんの毎日使う肌着やハンカチなどになっているという事実はあまり知られていません。そんなコットンを取り巻く世界の現実に対して感じる疑問を、未だ放射能汚染という風評被害にさらされている福島で、遺伝子組み換えでない種からオーガニック栽培で良質で安全なコットンを栽培することで示し続けているのです。」

■「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」の真髄
おてんとSUNが「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」として和綿で作っているのは製品だけではありません。かつて塩害で耕作放棄地となってしまった農地を抱える農家さんたちが集まって始まったプロジェクトですが、実はコットン栽培では収益としては大きくないそうです。それでもこのプロジェクトを続けているのは、農地を農地として活かせることと、プロジェクトに関わり合うことで「人との繋がりが生まれる」からです。もともとは食物を育てていた農家さんが多いですが、塩害や風評被害によって耕作放棄せざるを得なかった農地を「ただ放置しておくよりは」、「食す以外の作物でなら買ってくれる消費者がいるのであれば」という気持ちでプロジェクトに参加されています。それが5年目の収穫を経た今、農家さんたちの気持ちも変わってきています。今まで作ってきた和綿のファンになってくれる人が増えていき、自分でも使ってみると使い心地の良いものに出来上がっていることが実感できる。こういうことが農家さんたちの誇りの一つになっていきます。消費者から農家の顔が見えることはとても素敵なことです。それと同時に、農家さんから消費者の顔が見えることも同じくらい素敵なことで活力になっていきます。
良い和綿を作り、良い製品へとカタチを成し、それらが想いを繋げて通わせてくれることで人との良い関係が生まれ、どんどん輪が広がっていっています。
被災地となった福島では、人間の復興、心の復興というのはまだまだ途中です。本当の意味での復興を成すためには、お金が回ることだけではなく、きちんと人が希望を持てる社会を創っていくという意識を持てるようになることが大事なのです。
今まで当たり前だと思っていた社会の在り方とは違う、福島の人々がきちんと未来を見据え、震災の経験から学んだ上で描く新しい未来のカタチを目指して進んでいくという気持ちや想いをコットンに乗せて伝えていく。これが「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」の真髄なのです。

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