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原発論争の町? 足を運んで初めてわかる上関という場所

「推進派」「反対派」という構造で議論されがちな“原発問題”。しかしこの問題は、白か黒かで語れるほど単純な問題でしょうか。原発建設計画浮上から36年、今も尚議論の渦中にある山口県にある上関という町へLush Timesライターが足を運びました。マスメディアで語られることのない、上関のいまを伝える現場レポートです。

 緑生い茂る島の沿岸部に点在する集落。瀬戸内海に面した室津半島先端および長島・祝島・八島などの島々からなるこの町は、地形上、家を建て生活を営むことが出来る場所は限られているため、町民の家のほとんどが、数少ない平地に集中している。周囲を森と海に囲まれたこの小さな共同体の中での暮らしとは一体どんなものだろう?

 オンラインメディアで語られているのは、ほとんどが原発推進派と反対派の歴史。でも忘れてはいけないのが、原発計画の議論以前に、そこにはその土地の人々の日々の暮らしがあること。瀬戸内の海峡の町で、慎ましやかに肩を寄せ合って暮らしていた人々を、ある日持ちあがった原発計画が分断し、推進派と反対派の論争は36年間も続いている。そしてその間も、そこに住む人々の生活は脈々とつながれてきた。

  小さな共同体では、人のつながりと助け合いが不可欠。インフラも整備されていなく、物々交換で日々の食卓が成り立っていた時代も決して遠くないと地域の住民が話してくれた。そんな社会で、自分の意見を主張することが容易でないことは、想像がつく。ましてや、同じ地域に暮らす家庭が多額の補償金がもらえる話に反対をすれば、「お前はこの地域みんなの未来を潰すのか」という話になってしまう。
 

イラスト:上関の自然を守る会・エッキー浴野達宏
 

 また町内の地域によって、この原発計画から受ける影響が全く違うという事情がある。建設予定地である長島の南端に位置する田ノ浦湾に最も近く、行政上漁業を優先的に行えるとされている、四代という地域の漁業関係者には、電力会社から他の地域と桁ひとつ違う多額の補償金が支払われることになっている。しかし、四代の漁師たちが実際に漁を行っているのは沖の方であり、実際に原発から出る排水の影響を最も受けるのは、代々、田ノ浦湾周辺で漁をおこなってきた3.8km対岸の祝島に暮らす漁師たちだ。彼らからしてみれば、四代の人々が一つ返事で原発計画に賛成したことで、自分たちの住む祝島で唯一の集落から見て、朝日が昇るまさにその場所に原発を建設され、その上漁場まで奪われることになるのだ。四代と祝島では、状況がまるで違うのがわかる。

 つまり、原発は必要かという論理的な議論と同時に、近所付き合いや地域間の利害の対立など、村社会ならではの人間的な事情が原発問題の議論をより難しくしている。しかしその人間的なつながりは、同時にこの地域の魅力でもある。都市化が進んだ日本では、お隣の名前や顔を知らないというのも珍しくないが、ここでは、地域全体が大きな家族のような存在だ。だからこそ、「町民みんなが上関という場所に誇りをもち、自然という宝を次世代につなげ、豊かに暮らしていくための仕組みを作る必要性がある」と、原発計画が浮上した当時から原発建設の反対運動を続けてきた上関の自然を守る会代表の高島美登里さんは話す。

 高島さんが言う、町民みんなを巻き込む、原発推進・反対を問わない仕組みづくり、そして、私たちに出来ることとは一体なんだろうか?

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■ラッシュでは2018年5月18日、山口県熊毛郡上関町の自然環境を守るために原発計画に反対する緊急署名キャンペーンが始まりました。

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