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絵描き合気道家 浴野達宏が語る ー “アート”とはなにか

瀬戸内海の原風景が残る最後の場所、山口県の上関で出会った合気道家であり、画家である浴野達宏氏。山口県内で合気道教室を開く傍ら、上関の自然と人々に心を寄せ、絵や陶芸の制作活動を続ける彼にとって、アートとは。

Art is… 浴野さんにとってアートとは? 

   アートとは宇宙と地球と人を結ぶものであり、自分そのものです。自然を多く題材にしていますが、風景や景色だけでなく、海を守ろうとする純粋な気持ち、環境を守る人の行動に心を動かされます。上関原発の工事が開始した時、漁師さん達は自分の船を並べて、埋め立てを阻止しようとしました。大げさではなく命がけで行動をおこしている人の姿は衝撃的でさえありました。

   上関に関わるきっかけになったのは、祝島で4年に1度行われる神舞で、祝島には二度目の上陸でした。それを初めて見たのが22年前で、その時もスケッチをしていました。本格的に上関を描きだしたのが2008年くらい。絵を描くことに特別な意味ができたのは、上関原発の建設工事の開始の時です。上関の自然を守るため、僕ができる意思表示の方法が絵を描くことだった。絵を描くことで、計画に反対し、行動したかったのです。実際に上関にも足を運び続けました。自然環境と生態系を守る、「上関の自然を守る会」の調査に参加するようになって、景色としての綺麗さだけでなく、その海の中に住んでいる生き物がいかに貴重で、多様性に富んでいることを実感しました。上関の自然を描きたいと強く思うようになりました。

 

The creative world’s best-kept secret; アートの世界の秘密は

   僕は絵を描く合気道家ですが、合気道は武芸でありアートなのです。合気道の創始者である植芝盛平が考える合気道の精神が、僕の行動指針であり、最も影響を与えたアーティストです。その精神のなかでも「合気とは愛なり。天然や自然の動きを良く眺めなさい」というのがあります。

   つまり、自然の動きや自分の内なる精神にならい、体の動きだけでなく心も自然のエネルギーの凄さを自分に身につける。そして、そのもとが愛なのです。自然も人も、生かし合うことで、何百年、何千年と命が続いてきているわけですよね。喧嘩や戦争などからは、平和は生まれてこないですよね。破壊に進むばかり。環境破壊も同じです。生かし合う世界、共存し合う世界というものだというのが合気道の精神の中にある。それが絵を描くきっかけになりました。

   また、合気道には試合がありません。相手と戦うのではなく、相手や外界と一体になるということなのです。上関に行くと感じるのは、海や自然の風景は自分たちと一体であり、上関にいるスナメリなどの生き物も環境と生き物が一体となり生かし合っているということ。

   例えば夕日が沈むときの様子は、太陽を中心にすべてのものが調和していくように感じます。宇宙の大きな営みの中でいろんなものが調和して進んでいくというか。そしてそのスピードに遅れないように同化するように魂も磨いていかないといけないよ、というのが合気道の精神。その精神の表現方法として絵を描いています。

 

Free expression; 自由に表現して作品を作ることと、見る人が楽しむ作品を作ること、どうやってバランスをとっていますか? 

   深くは考えたことはありません。他のことをあまり深く考えずにそれ作りたいという心で作っています。できたものが人の心に触れることはありますけどね。

   僕にとって作りたいものが作るべきものです。僕は上関の自然を守る会の理事として、上関地域の生態系の調査などにも同行していますが、そこで見たものや経験したことは、絵にせずにはいられません。僕の場合、写真があっても、実際に見ていないものを絵に描くというのはできません。実際に目で見て、体験して、スケッチをする。そうすると、後でお皿なんかに絵を描く時にも実感が湧くんです。

 

The power of the artist; 今日の社会でアーティストが担う役割とは

   人はみなアーティストです。僕の場合は合気道と美術ですが、音楽や、料理で伝えている人もいますよね。伝える方法はどの人にもあるのだと思います。それぞれのやり方で創作をしていけばいいんじゃないか。個性を発揮していけばいいんじゃないか。

   だからすべての“アーティスト”に「お互い元気にやっていこうよ」って伝えたいですね。それぞれに個性があるから、それを存分に発揮してもらえれば、お互いにハッピーで楽しい、素晴らしい世の中になるんじゃないかと思います。僕自身も、いろんな創作活動をやっていますが、もっと深めて、探究し、楽しんで、味わいたい。そして伝えたいことが伝わればいいのではないか思います。

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