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FEATURED

Soapbox: 化粧品のための動物実験を過去のものにしてしまおう

言論の自由はとても大切な権利。「Soapbox」のコーナーでは、社外の専門家に依頼し、見識や解説について寄稿いただいています。
今回の執筆は、「特定非営利活動法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)」理事の亀倉弘美氏。日本国内における化粧品による動物実験についてお伺いしました。

例えばシャンプーの原液をウサギの目に注入する、リップカラーの材料をマウスの口から強制的に投与する、日焼け止めを背中に塗ったモルモットをアルミホイルで覆いUVランプを照射し続ける・・・私たち人間が美しくなるためのツール<化粧品>のために、か弱く無抵抗な動物たちが実験台として供されてきました。
2013年、ヨーロッパでは倫理的に問題だとして法律で禁止になり、日本でも大手企業が自主的に廃止を宣言するも、いまだにこの悪しき慣習が、現在進行形で続けられています。

「R社は美しさのためにどれだけウサギを失明させるつもりなのか?」――1980年、目がただれたウサギの写真とともに、誰もがよく知る大手化粧品メーカーの実名が出された衝撃的な意見広告がニューヨークタイムズに掲載されると、欧米の消費者のあいだに瞬く間に抗議と不買の輪が広がり、化粧品の動物実験反対運動に火が付きました。それから35年。この間、多くの化粧品メーカーが動物実験を中止し、EUを筆頭に法律で禁止する国や地域が増え、動物を使わない試験方法の開発が進みました。ここ日本も例外ではなく、いくつかの大手化粧品メーカーがこの数年で化粧品の動物実験を廃止したというニュースをご存知の方もいらっしゃると思います。

人間が使うものが危険かどうか、まず人間で調べるわけにはいかない、だから動物を使って実験するのは当然だ――これが今まで動物実験が続けられてきた最大の理由であり、今なお動物実験という古い方法論にしがみつく企業や行政当局が、美しさのために動物たちを犠牲にすることを正当化するための方便として使っています。

人間の健康を危険にさらしてよいのか、と迫られれば誰しも簡単には反論できないでしょう。でもはたして、企業活動や個人の消費行動に社会や環境といった他者への配慮が求められるようになったこの時代に、こんな道理をいつまでも通していてよいのでしょうか?

化粧品の動物実験禁止のロールモデルとなったEUでも、動物実験禁止が決議されてから施行されるまでのあいだ、人間の健康と安全確保は常に大きな争点となってきました。つまり、動物実験に代わる、動物を使わない試験方法(代替法)が確立されていないなら動物実験を禁止するべきではないというのが「禁止反対派」の主張でした。EUの議会で禁止が決議されたのが1993年。それ以降代替法は、これまでにない規模の予算と人材が投入されてその開発が猛スピードで進められてきました。ヒトの皮膚細胞を培養して作られた精巧な試験モデルや化学物質の構造からコンピュータで毒性を予測するシステムなど、最新の技術が駆使されて開発された代替法はすでに各国で実用化されるに至っています。しかし残念ながらいくつかの試験項目は現状ではどうしても代替が難しいとされ、化粧品業界による反対の理由として使われてきました。なぜ化粧品業界が禁止に反対するのかというと、いまだ市場に出ていない新成分を開発すれば大きな利益をあげることができ、その安全性を確認するために(代替法のない)動物実験が禁止されてしまえば、新成分開発という “虎の子”を奪われてしまうからです。実際、化粧品業界の反対によって禁止の施行が2度も延期されるという残念な経緯がありました。

そして、2009年3月には全面的な禁止となるはずだったのですが、代替が難しいとされた試験は例外とされ、2013年まで動物実験をすることが許されてしまいました。その後4年の歳月が流れるあいだに、例外とされた動物実験の代替法は結局開発されず、またしても禁止は延期されるだろうといわれていたのですが、ここでEUは「代替法が確立していなくても禁止する」という大英断をくだしたのです。2013年3月、化粧品の動物実験は例外なく完全に禁止され、EUは晴れて世界最大の「動物実験していない化粧品市場」となりました。

このEUの決断が意味するのは、科学的・経済的な観点ではなく、倫理的な観点から化粧品の動物実験は禁止するべきである、という社会的な合意が生まれたことです。「美しくなりたい」という、いわば人間の虚栄心を満たすための化粧品に、動物の命を犠牲にする必要があるのか。すでに人間は何千種類・何万種類とも言われる化粧品の原料を開発し、長年にわたって使い続け、その安全性を証明してきているなかで、さらに動物を苦しめてまで新しい成分が必要なのか。そして、動物を苦しめて作られた化粧品で自分は本当に美しくなれるのか。これらの問いに対して社会が出した答えが、動物実験の禁止でした。たしかに企業活動に新製品開発というイノベーションは必要かもしれない、でもそれ以上に、他者とりわけ社会的弱者を搾取してまでの利潤追求は許さないという、人類の過剰な欲望へのブレーキが働きだしているのかもしれません。

日本ではどうでしょうか。2013年2月に行なわれた意識調査(※注)では、化粧品のために動物実験が行われていることを7割もの人々が「知らなかった」と答えました。私たち消費者が動物実験の事実を知らずに化粧品を購入すれば、動物実験を行っているメーカーの売上に貢献することになり、ひいては動物実験を支えることになってしまいます。EUでの禁止の影響もあって2013年以降、これまで動物実験を行ってきた複数の大手メーカーが「動物実験廃止」を宣言するなどの動きはあるものの、日本には化粧品の動物実験を規制したり禁止したりする法律はなく、利潤追求を目論んで動物実験を続けるメーカーの存在を許しています。あなたの周りにまだこの問題を知らない人がいたら、動物の苦しみに加担することにならないように、ぜひこの実態を知らせてあげてください。しっかりした動物実験反対のポリシーを持つラッシュの企業としての取り組みを紹介してあげるのもよいかもしれません。

そしてもう一つ。その事実を知らない人が多かったものの、化粧品のための動物実験を「かわいそうだ」と答えた人は78%に上りました。動物愛護活動はよく「感情的だ」と揶揄されることがありますが、EUでの禁止が実現したそのベースにあったのは、実験で苦しめられ殺される動物たちがかわいそうだ、助けてあげたいという消費者のシンプルな欲求でした。その消費者の思いが、企業を動かし実験を中止させ、研究者を動かし代替法の開発へとつなげ、政治家を動かし法律を変えてきたのです。一人一人の力は小さく思えるかもしれませんが、他者を思い、世界を変えることができるのは、そんな小さな力の集合体です。化粧品の動物実験が過去のものとなるその日まで、私たちと一緒に「美しさに犠牲はいらない!」あなたも声をあげ続けてください。

※注
調査概要
実施主体 株式会社ラッシュジャパン
調査機関:2013年2月25日~2月27日
調査方法:民間調査会社によるインターネット調査
調査対象:15~69歳 男女3,355名
協力:NPO法人動物実験の廃止を求める会/NPO法人アニマルライツセンター/PEACE/Humane Society International

文:亀倉弘美
特定非営利活動法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)理事

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