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「故郷を帰れる街にしたい」ー 地方都市のセクシュアル・マイノリティのために歩き続ける【後編】

日本列島の最北端青森県の青森市で、2014年にたった3人から始まった「青森レインボーパレード」は2018年6月24日、5回目を迎えました。青森レインボーパレード主催メンバーの岡田実穂さんと宇佐美翔子さんに、これまで青森で活動してきた理由を、地方出身のセクシュアル・マイノリティ当事者であるユーチューバー、かずえちゃんが聞きました。

5年間で、アライ(セクシュアル・マイノリティをサポートする非当事者)の人、周囲の変化ってありますか?

宇佐美:LGBTQ支援に取り組む企業が増えたことや、LGBTQに関する話題が増えたというポジティブな変化は、発信する人たちの努力によって変化だと思います。一方でネガティブな部分もあります。ある年、東京プライドの会場で、ある企業がアンケートを実施していました。答えようと思ったら、男・女の記入欄しかなくて、自由回答もないわけです。「なんで?なんのパレードか知ってる?性別を答えたくない人もいるし、男女のどちらかにチェックしたくない人もいるのに、なんで男女しかチェックする項目がないわけ?」って聞いたら「本社で言われて来ただけなのでわからないです」って言われました。今は、オリンピックの前ということもあって、企業や自治体が変革を起こそうという動きが高まっていますが、それは本社の方で決めることであって、実際にお客さんやコミュニティの人に接する人が知らないということがあるんですよね。企業発信としてはプラスに見えるけど、セクシュアル・マイノリティの人にとって本当に必要なのは、接触する人に知識と理解があるということです。「これを契約したい。私たちは同性カップルです」と話した時に接する窓口の人に知識と理解がなかったら、その度に私たちは「被害を受ける」ことを経験するんです。「この企業は取り組んでいるって、あんなに新聞やニュースで言ってたじゃない」と、普段から気にしてみているからこそ、すごく傷つくんですよ。今でこそ、対応する窓口の人まで、理解だけでなく知識が必要というのが少しずつ理解されてきましたが。

 

企業に意志があっても、実際のコミュニケーションまで考えられていないんでしょうか?

宇佐美:実際に人と人が接するという、リアリティが欠けているんですよね。

岡田:ある有名ブランドの話ですが、デザイナーがレインボーをあしらったデザインを「コミュニティに捧げる」と言って発売しました。メッセージにみんな感動して、私も東京に行った時、高くて絶対買えないなと思いながら、一目見たくてお店に行きました。でも店員さんに「レインボーの商品ありますか?」って聞いたら、「ああいう賑やかなデザインがお好きなんですか?あれより、これはどうですか?」って言われました。強い思いがあって作られて、それに対して思いを持って見に来たのに、その店員さんはそのバッグの意味すら知らないってことですよね。あれだけのメッセージを出したのに、周知されていないのは、期待した分ものすごく残念でした。それは、ラッシュが過去に行ったキャンペーンも同じで。当時、セクシュアル・マイノリティであることをオープンにしていなかった知人に「青森でもLGBTQの権利について声をあげている会社があるんだよ」と伝え、一緒にラッシュのお店に行くことになりました。それで、一緒に行ってみたら、店内の隅にレインボーの看板が置いてあって、気が付いたラッシュの店員さんに「7色の虹って綺麗ですよね」って言われたんです。ああ、この人このキャンペーンのこと何にも知らないんだ、って思いました。一緒にいた知人も「やっぱ青森はダメだな」みたいになってしまって。メッセージを強く発信している会社だからこそ、期待するんですよね。

宇佐美:LGBTのLは何、というのを説明ができることまでは求めていないんです。「このキャンペーンは何のためにやっているのか、このキャンペーンを必要だと思っている人がいるっていうやりとりができれば、当事者としては思いがあるだけで十分なんです。社会が変わっていく中で、企業の中でもSOGI(*2 )とか多様な生き方をサポートすることを発信する場面が増えていますが、現場の人たちにまで企業として取り組む理由を伝えて欲しいと思ってます。

*2 SOGI(性的指向: Sexual Orientation、性自認 Gender Identityの略称)

そのためには、メッセージを発信するすべての企業は社員教育を徹底するべきということでしょうか?

宇佐美:そこまでしなくてもいいと思っています。例えばキャンペーンをやるのであれば「今回こういう問題が世界で起こっていて、企業として声をあげるため、キャンペーンをします。ですから地方にいる当事者の人も、アクションを起こすためにドキドキしながら買いに来る人もいるかもしれません。」ってとこまででいいんです。それを理解していれば、そっか、そういう風に買いに来る人もいるんだ、ってイメージが出来るますよね。

岡田:強いメッセージをしっかり、全員と共有するということです。

宇佐美:それで初めて、企業としてアライと呼べるんだと思います。

 

経営陣が言っているだけじゃなくて、実際に行動に表れるということですもんね。

宇佐美:なんのために、誰のために、というのが共有できていれば、何かあった時に一緒に立ち上がることができる仲間なんだと思えるんですよね。やっぱり私たちが、日々会話するのはお店の人ですから、その人たちが話すことで、企業として発信していることの厚みがわかります。専門家にはならなくてもいいから、大事だと思って行動して欲しい。それだけのことです。

岡田:ラッシュ青森ELM店とは、キャンペーンへの理解がないと感じたことでカミングアウトしていない当事者が再び諦めの気持ち持ってしまった一件のあと、ELM店のショップマネージャーや東京のチャリティ担当者と話して、チャリティパーティー(*3)を一緒にやってきました。1年目はお店のスタッフもすごく怖かったそうです。「当事者じゃないのに、セクシュアル・マイノリティの話をしただけでこんなに嫌な顔をされて無視されるんだ、と知ってすごく辛かったんです」と話してくれました。でも同時に人はこんなに変わるんだ、とも言っていました。回を重ねるごとに、話を聞いてくれる人も増え、今年はボードへの寄せ書きもたくさん集まりました。1回目から関わってくれていたスタッフたちからは特にいろんな感想を伝えてもらい、ショップマネージャー自身も「1日目から泣きそうになっちゃって」と言っていました。変化というのは、スタッフみんなの中にも生まれていて、今回はスタッフから研修して欲しいというお願いを受けて、開店前の朝8時からみんなで集まって研修をしたり、チャリティパーティーでなにをするかのミーティングもしました。

*3 ラッシュのショップで行なっている、地域で活動する草の根団体を支援するためのチャリティイベント。開催期間中のハンド&ボディローション『チャリティポット』の売上げの全額(消費税を除く)が、チャリティパーティーを共同開催する草の根団体に寄付されます。

宇佐美:それを踏まえて、今回のチャリティパーティーでは何をするか一緒に決めたんですよね。とにかく、スタッフみんなの「LGBTQについてわかりたい」という気持ちが嬉しかったし、人ってこういう風に聞いてくれるんだな、と思えたからこそパートナーとして一緒にやっていけると思いました。実際に、どんな痛みがあるかわからない人たちに一緒にやりましょうと言われるのとは違いますよね。セクシュアル・マイノリティの権利を訴えることの難しさを経験してこそ、メッセージを発信するスタートラインだとも思います。社会で起きていることを、実感した人でないと難しいと思うんですよ。私自身、青森のラッシュのみんなと毎年チャリティパーティーを開催してきて、学んだことでもあるし、可能性を感じる部分でもあります。私にとってもショップのみんなにとっても、ショップの前を通る人って社会みたいなものですが、その人たちが、どんな方法だったら興味を持ってくれるのか、何だったら賛同してくれるのか、ということを毎年考えてやっていくのが楽しみになりましたね。

岡田:チャリティパーティーも毎回パレードの前にやるので、プレパレードという位置付けみたいなところがあります。ラッシュがあるELMっていうショッピングモールは、青森でも本当に人が集まる場所で、たくさん人が通るところでレインボーフラッグを飾って、LGBTについてずっと発信しているという意味では、街を歩くのもラッシュのお店で発信するのもとても意味のあることですよね。

宇佐美:来年はレインボーパレードを開催できませんが、これからも何か違う形でも、メッセージを発信し、セクシュアル・マイノリティの当事者にとって何かのきっかけになるような日は作っていきたいなと思っています。

岡田:周りの人や社会に何かして欲しいとは思っていません。そもそも権利運動は、その権利を阻害する要因がなければ問題なく生きていけるんです。今は、権利を阻害しているものがあるから、社会に対して私たちの存在や求めている当たり前の権利を訴えているわけですよね。聞く耳をもった社会や人であってくれればそれでいいなと思います。

 

◀︎前編はこちら

2018/7/2

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「故郷を帰れる街にしたい」その強い想いが2人を動かし、そして青森の街を少しずつ変えていく。お2人の強いなかにもある「温かさ」をすごく感じました。そして、これからの自分の指針となる素敵な言葉をたくさんもらいました。/ユーチューバー かずえちゃん

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