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みなかみの自然を次世代へと繋ぐ

「日本には古来より、木と木を組み上げて建築物を作る文化・技術があります。世界遺産である法隆寺の建築群も、旅先で出会う古民家も、実は同じ技術体系でつながっています。木の接合部分は人の手で刻まれ、金属を使わずに接合され、組み上げられて、今日までその姿を残しています。」

 

こう語るのは、群馬県みなかみ町で工房を構え、自然を生かした伝統的な木組みの家造りを行う「工舎 澄み処」の山口長士郎さん。

 

「もともと日本人は、縄文時代から木組みで家を造ってきました。現代の家造りというのは、木造であってもあらかじめ工場で木材を切断し、接合部分を機械で加工する『プレカット』が主流。現代の建築は合理的で効率的な方法ですが、僕たちは機械に頼らずに自分たちの手で造ることにこだわっています。」

木に対しての愛着や手造りにこだわる山口さんのルーツには、地元みなかみの木材「奧利根ヒバ」にありました。

「奥利根ヒバという木は、樹齢が200年から300年ほどあります。昔からみなかみの山の奥地から伐採されて大量に運び出されていたという背景があります。年輪が詰まっていて美しいこの木は、みなかみの山の尾根沿いにある、風が強く、雪の降る厳しい環境で育ち、針葉樹ですが1年に1ミリくらいしか太くなりません。この厳しい環境でゆっくりと育ったからこそ、建築の材料として使おうとすると「暴れ(あばれ)の表情」と言われる、その木の特性で表れる反りやねじれ、変形が所々に現れ、人間の技術で扱うのが難しいんです。」

そのため、建築の材料として世間では見向きもされず、かつては線路の枕木などに使われていましたが、あまり使われないにもかかわらず大量に伐採されてきた奥利根ヒバは、そのうちほとんど人の目に触れずに、切られて終わってしまったという悲しい木でした。

ありのままの自然の美しさがある奥利根ヒバを生かさなければもったいないと思い、山口さんたちは借金をしてまでこの丸太を買い集めました。しかし奧利根ヒバは木材として使えるようになるまで最低でも7年かかります。丸太を製材した後、しばらく寝かせ、数年後に再度製材して、やっと使えるようになります。

「寝かせている間に木の特性で表れる反りやねじれ、変形といった『暴れの表情』が出てきてしまいます。こういった暴れる木材を機械で大量に処理する工場では、あまり使いたくないですよね。でも、人の目で見て、手で触って、木の状態を確認することで木本来の美しさを引き出せると思います。自然のスピードに合わせることが大事だと思います。そうしないと自然、住み手、僕たち、誰かが悲しい思いをすると思います。みんながハッピーに暮らすために、今は手仕事しかないと思っています。」

自然豊かなみなかみ町で育ち、木組みの家造りを通して自然の素晴らしさを伝える山口さんにとって、身近にあるみなかみの森は、当たり前のものでした。しかし、大学、社会人になり、みなかみ町を離れることで、2016年にみなかみに帰ってきた時、故郷への印象がガラッと変わったと言います。

「森って何かっていうと、とにかく楽しいんです。街で遊んでいると、お店なんかは変わっても、遊び方自体はそんなに変わらないんです。でも、森で遊ぶと、今年学んだことが来年活かせる。こんな実が美味しい、この木はこういう場所に生えるんだ、と学び、翌年それをもとに自分で森を探検します。そうすることで知識が深まり、今まで知らなかった新たな森の姿が見えて、みなかみにある『赤谷の森』の楽しみ方がどんどん膨らんでいきます。これが自然の中で、自然とともに暮らす楽しさだと思います。」

東日本大震災がきっかけで自然の脅威、そして自ら動いて自然と向き合うことが大事だと実感した山口さんは、大学在学中から、地元でどのような活動があるのか、自然を守るためにどのような関わり方ができるのかを調べていました。その時、地元のみなかみ町で公益財団法人日本自然保護協会が行なう「赤谷プロジェクト」を知り、参加することを決意したと言います。

「赤谷プロジェクトとは、赤谷の森に住む生態系を守る活動。その象徴がイヌワシです。イヌワシが住める森というのが豊かな森ということを知りました。イヌワシの生態を守ることは、豊かな森を保ち続けることへと繋がっています。イヌワシの生態を守ることの難しさを踏まえ、人間が何をやっていかなければいけないのか、逆に何ができるのかということを一つひとつイヌワシを通して考えることで、赤谷プロジェクト全体の方向性が定まっていくと思います。」

地域づくりも同じだと山口さんは考えます。

「子どもたちに『自然が大事』と漠然と話をするよりも、『イヌワシって羽を広げると2メートルなんだよ』と実物大の図を見せると興味を持ってくれます。他にも木や動物の話をすると、その新しい知識を素直に受け止め、それを授業のあとに家に帰って親御さんに話をしてくれるみたいです。幼い頃から記憶に残すことって、とても重要だと思います。そういう意味で次世代へと繋ぐための大事な題材だと思っています。」

日本の国土の7割は森林であるといわれる中、伐採もされずに森に放置されている木が日本の森にはたくさんあります。解決策がどこまで出ているのかわからない状況の中で、地域とあらゆる人を巻き込んだ一つの活動である『赤谷プロジェクト』。例えば赤谷の森の木材を使ったおもちゃ、それが誰かの必要とされるものに変わり、都会の人が小さい頃から木のおもちゃに触れて育つ。自然に対する感受性が豊かになりいい循環ができるための土台が「赤谷プロジェクト」にあるのではないでしょうか。

ラッシュ みなかみの自然を次世代へと繋ぐ
ラッシュ みなかみの自然を次世代へと繋ぐ
コメント (3)
3 件のコメント

NO NAME 6999404

3ヶ月 前に

長士朗君、みなかみの森への意気込み、夢、自然への思い、読まさせてもらいました。 素敵ですね。この土地で生まれこのみなかみで育ち、奥利根ヒバへの思い 素晴らしいです! 私も木に絵を描いている傍ら、こんなに森が沢山あってその奥利根ヒバの存在、意味を知り得た事、感動しました。 自分が生まれ育ったこのみなかみ町の森を誇りに思えました。 頑張ってください。いろんな体験、これからが楽しみですね。

NO NAME 7000519

3ヶ月 前に

長士郎です。 コメントありがとうございます!奥利根ヒバのような悲しいストーリーがある一方で、赤谷プロジェクトのような希望がある水上の森です。乱開発に反対し、この地の生物多様性を信じて来た少数の先人たちが80-90年代にいたから赤谷プロジェクトが00年代に生まれ、活動が熟成してきて、この記事が今、陽の目を見ています。多くの方に知って頂けて嬉しいです。

Lushカスタマーケア

3ヶ月 前に

スタッフ

コメントありがとうございます。
この記事を読んで頂けた事、そして生まれ育ったみなかみの森を誇りに思うと言って頂けた事、とても嬉しく思います。この出逢いをきっかけに、これから私たちもみなかみの自然の美しさを一緒に届けていきたいと思います。MIREI

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