FEATURED

断食修行でデジタルデトックスをしてみたら

ラッシュでソーシャルメディアを通して情報を発信しているAo。仕事中はもちろん、プライベートでもスマホを手放すことは少ない。そんなAoが、断食修行に行こうと決意し、さらにスマホを手放しデジタルデトックスまでしてみることに…

 

 1年前の結婚式に向けてやったダイエットで、−8kgを達成して「やればできるじゃん!」となった私。でも目標がなくなったら、いつの間にかまた好きな時に好きなものを食べるのが当たり前になっていた。毎日3食、時間になったら大してお腹がすいてないのに食べちゃう。外食で満腹になるまで食べて、コンビニでお菓子やジュースを買って後悔して…。あれ?これって本当に食べたいものだっけ?

 

 起きてから眠りにつくまで、スマホを見ていないときはほぼない。スマホが手元にないとすぐに不安になっちゃうし、スマホには暇つぶしのアプリがたくさん入っている。トイレやお風呂にまでスマホを持っていって、母に笑われたこともある。ベッドに入ってもなかなか眠れないのは、寝る直前まで時間を共にするスマホの明かりのせいかも。でも、簡単に繋がれるからこそ、すぐに反応しなくちゃいけない気持ちになるスマホで繋がる人間関係が時々煩わしくもなる。「何をそんなに見ているの?」そう聞かれてもわからないのに、いつの間にかこの小さな機械に思っている以上に依存してしまっているかも。 

 食べ物、スマホ、人間関係。自分に本当に必要なものを知りたくなった時、ネットで「断食修行」の言葉を見つけた。心身ともに引きこもり気味の私が、何かに引かれるように「やってみようかな」と思えたのは奇跡だと、今でも思う。

 

 断食当日。まだ薄暗い時間に起きて、ぼんやりとスマホをいじりながら身支度。「断食行ってくる!3日間連絡取れないよううう;」と友達や家族に泣き言を送ってみたけど、朝早すぎて誰からも返事が来なくて余計寂しい気分に。しばらくいじれないのかと憂鬱な気持ちになりつつ、観念してスマホの電源を切り、ついに出発。玄関を開けて数分で、忘れ物はないかとズボンのポッケのスマホを探してハッとする。先が思いやられる…。

スマホなしで電車に乗るのがこんなに不安だなんて、知らなかった。乗り換えが無事できるか不安でずっと掲示板を見ていたり、時間がわからないから隣の人の腕時計をチラリとのぞいたり…。駅に着くまでで、すでにぐったり。私が3日間過ごすのは、千葉県にある成田山新勝寺。ここで三泊四日の断食修行に挑むのだ。水しか飲んではいけないし、スマホやゲームも禁止。「よし!」覚悟を持って大きな門をくぐるつもりだったのに、自然と門の写真を撮ろうと早速スマホを探ってしまった。悔しい。

 お寺に着いたら担当の方から説明を聞き、寮に案内されたら、渡されたのはヤカンと小さい湯呑み。併せて飲んだ回数を正の字で数える水分表を渡され、いよいよ断食スタート。夏休みのラジオ体操表みたい。

 寮の和室は意外にも涼しく、セミの音しか聞こえない。「断食でないのなら最高の空間なのに」と思いつつ、早速暇に。スマホがないと暇すぎる。「暇すぎる」と呟こうとしてもスマホはない。困った。しょうがないから散歩に出てみたら、近くに池が。亀が!亀が何十匹も池の中央にある岩に登って日光浴してる!

「みんないいポジションにつこうと必死だなぁ」

「下の方の亀が蹴落とされて池ポシャしちゃってる…」

「あの亀、埋もれて見えなくなっちゃってる…」

なんて観察していたら、いつの間に30分以上過ぎていてビックリ。最後には一番大きな亀を「ジョージ」と名付けたり。「スマホがないと亀にもこんなに熱中できるんだー。」と思いながら、スマホがあったら、ただ写真を撮って終わりで、きっとその写真ももう見なかったりするのにな、とちょっと面白くなった。

 食べるものもないしすることもなく、本を読んでいたらいつの間にか眠りに…。2日目は4:30に起床。固い布団で寝たからか、ご飯を食べていないからか、体が重い。お腹が空いた。朝靄の残る中石段をえっちらおっちら登り、朝護摩と呼ばれる儀式に参加した。煩悩だらけの気持ちを何とか集中させていた30分間が終わると、寮に戻りばったりと寝てしまった。休日はどこも出かけずに、寝てご飯を食べることを繰り返すことも多い私。朝ごはんや昼ご飯の時間に起きなくて良いとなると、いくらでも寝ることができてしまう。

 始める前は、空腹はどんどんレベルが上がって耐えきれなくなるのかなんて考えていたけれど、空腹は空腹。日常だと、少しお腹が空いたり、時間になると自然にものを食べるのが当たり前だったから驚いた。もしかしたら無駄に食べてしまっているものもけっこうあるのかな。でも、食べたいものを書き出してみたら止まらなくなって、やたらと和食ばかり浮かんできて、母の手料理が食べたくなって。「早く帰って美味しいものが食べたい!!」

 スマホでは気軽にコミュニケーションが取れるのに、直接人と話すのは苦手で人見知りな私も、さすがに3日目には周りの人と話してみた。社会人生活から一念発起して学校に通い始めた人、運命の出会いから自分も美容師になった人。いろんなことを話しながら、ここに来なかったら出会うことのない人だなと思って不思議な気分に。「縁があったからここにいるんだね」という言葉が響いた。

 新しい人と出会った時、LINEを交換したり、Facebookで友達申請をするのが普通な今。スマホがないので、ノートに連絡先を書いてもらった。素敵なメッセージと共にノートを渡されて、ほっこり。現代の友達の作り方は味気ないのかな?

 新しい出会いや人とのつながりをもっと大事にしたいと思えたのは思わぬ収穫だった。

 最終日の朝には、始まった時からずーーっと楽しみにしていたイベントが。そう、この日は朝食をいただける。ワクワクしながら集合場所に向かうと、おかゆと、梅干しと、焼き味噌と日本茶が。「やっぱり日本人は和食だ…」しみじみ感じながらいただいた。風邪をひいたときくらいしか食べないおかゆ。お米の甘みを感じられる…。一口一口味わうように食べた。美味しい。焼き味噌の味が濃い。濃すぎてびっくり。舐めるように、ほんのちょっとずつしか食べれなくて笑ってしまう。濃い味が好きなはずなのに、3日でこんなに味覚が変わってしまうのか…。

 断食が終わった後も、しばらくは少食になって、何を食べても味が濃かった。体重は2kg減っていた。(やったー!)断食中あんなに食べたかったお菓子も、まだ買っていない。そして何より、空腹があまり気にならなくなった。美味しいものを、必要な時に。実家に帰って食べた母の手料理は、めちゃくちゃ美味しかった。

 断食を終えて、その足で職場に向かった。あれは夢だった?と思うくらいあっという間にスマホとパソコンに囲まれた生活に元どおり。でも、変わったことはあった。あれだけ気になって、いじりたくてしょうがなかったスマホが、ちょっとくらい手元になくても気にならなくなった。少なくともトイレにはもう持っていかない。インストールしまくっていた暇つぶしのためのアプリも、断食が終わってから一度も開いてないことに気づいて、バカバカしくなって消した。

 必要以上にスマホは見なくなったけれど、友達と話したくなって連絡をとってみた。久々にゆっくり読書する楽しみを思い出して、スマホを置いて本を読むことが増えた。それでも気軽に音楽が聴けたり、情報がすぐに手に入ったり、便利なスマホはやっぱり私には欠かせない。けれど、今の方がもっとうまく付き合えそうだ。今これを読んでいるあなたも、やっぱりスマホからこれを見ていて、気づかない間に依存しているのかも。あなたも試しにこの週末は、スマホの電源を切ってみない?画面ばかり見つめていて、今まで見えなかったものに気付けるかも。

Written by Ao Nagasawa
Visual-note by Elie Tanabe

2018/9/6

コメント (0)
0 件のコメント