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海洋プラスチックに向けられるイギリスの視線

私たちの日常生活に深く関わりのあるプラスチックが今日、海を汚染する物質として注目をあつめています。今日、各国でプラスチックの使用を廃止する動きがでているなか、アムステルダムでは、とあるスーパーが、プラスチック代替品を使用した、世界初の“プラスチックフリー”の食品売り場の設置を発表しました。このスーパーの取り組みは、海をプラスチック汚染から守る一歩となるのでしょうか?今年2月にロンドンにて行われた、オーシャンプラスチック・クライシスサミットでは、環境問題に関する専門家や活動家が集まり、目前に迫り来る、プラスチックで溢れる地球の姿を防ぐための解決策について議論を繰り広げました。。イベントに参加したLush Timesのライター、ケイティ・ダンシー=ダウンズからのレポートをお届けします。

-私たちのプラスチックオーシャン

BBC社の環境アナリストのロジャー・ハラビン氏はある日、ケニアの浜辺に立って、ウミガメを自然に帰す作業をしていました。このウミガメは、住処である海でエサと誤って食べてしまった大量のプラスチックをお腹から取り除くために、3週間、ロジャーによって保護され、下剤を投与されていました。ロジャーが浜辺を後にしながら、最後に海の方向を振り向くと、先ほどウミガメが解放された同じ場所に立っている子どもが、プラスチックボトルから最後の一口を飲み干し、ボトルを浜辺に投げ捨てている姿がありました。

オーシャンプラスチック・クライシスサミットで登壇中にこの体験を話したロジャーは、一連の出来事に関して腹を立てている様子でしたが、問題解決への希望も見いだしていました。BBC社のジャーナリストになって30年、これほどの海洋汚染に人々が関心を持ったことは今までなかったと言います。

ロンドンの王立地理学会に集まったこのサミットの登壇者たちは、我々人類がこれまで排出し続けてきたプラスチックによる海洋汚染をどのように解決するのかという議論をステージ上で繰り広げました。

盛大に行われたサミットのオープニングでは、社会権や人権擁護者である、元女優のビアンカ・ジャガーが「たった一世紀で地球の生態系の大多数が生息する海が、プラスチックの墓場となってしまいました。」と、この問題の重大性を訴えました。

今日、すべての海洋生物がプラスチック汚染の影響を受けていると懸念されています。英国における循環型経済の権威「エレン・マッカーサー財団」によると、このままのペースで汚染が進行した場合、2050年までに、プラスチックの量が魚の数を超えると予想されています。海を汚染しているプラスチックは、陸地で製造された後、不適切な収集やリサイクリングによりそのまま海へと流れていきます。

海鳥もプラスチック汚染により被害を受けています。ペットボトルのキャップ、プリンターのインクカートリッジやゴルフボールといったゴミがお腹に詰まり、死亡するケースが多く発生しています。プラスチックを食べてしまった海鳥は、胃の中でプラスチックが分解されないまま残留した結果、本来の餌を食べることが出来ず餓死してしまいます。

目に見えるプラスチックごみよりも気がかりなのがマイクロプラスチックです。海にたどり着いたビニール袋、漁網やそのほかのゴミはは、太陽の熱によって劣化し分解され、そのまま小さなプラスチック物質になります。これがマイクロプラスチックです。あまりにも小さい物質なので、海から引き上げたり、取り除くことができないまま、海中を浮遊し続けています。

マイクロプラスチックは、食物連鎖の最下位にいるプランクトンやそのほかの生命体が摂取し、プランクトンを食べる大きな魚や海洋生物は、マイクロプラスチックを食べているのと変わらないことになります。そして私たち人間も魚を食べる行為を通してプラスチックを食べているということになるのです。

イギリス政府は今年、25年間の環境行動計画を発表しました。この計画は、2042年までに回避できるプラスチック廃棄物を取り除くことを目的としてますが、これは十分な対策なのでしょうか?

-海洋プラスチックは既に違法だった

イギリスの環境ジャーナリストであり、活動家、著者としても活躍するあるオリバー・ティッケルによると、海洋プラスチック問題を解決するための国際法が既に存在しています。。彼の見解によると、国単位で日々使用されているプラスチックが海洋汚染を発生させること自体、明らかな国際法の違反となっているということです。

サミット中、オリバーは、海洋プラスチック汚染の国際法違反に関する社会的責任を題材にしたArtists Project Earth (APE)の報告書を発表しました。Artists Project Earth(APE)は、音楽とアートの力を使って、21世紀の環境問題に取り組む活動をしている団体です。
海洋汚染を禁止する国際法は以前から存在していますが、プラスチックの海洋汚染に関しては、国際法を守っている国はいないとオリバーは言います。

海洋プラスチックが違法であることを証明するために、オリバーは報告書の中で様々な法案のリストを挙げています。なかでも注目すべきポイントは、1994年に決議された海洋法に関する国際連合条約の第194条1項で、ここには「いずれの国も、あらゆる発生源からの海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制する」ことが定められています。

1995年に発効された陸上に起因する活動からの海洋環境保護に関するワシントン宣言では、海洋のプラスチック汚染を取り組むための方法をいくつか定めています。しかし、このワシントン宣言は法的な拘束力がないため、“道徳的な力”で成り立っています。1995年10月23日から11月3日まで行われていた国連会議で参加した国は、この宣言に合意しています。合意した当事者は、「陸上に起因する活動から海洋環境を持続的で効果的な行動のもとで行動する」ことに同意しています。この宣言は複数の汚染物質を条件対象としており、その中でも廃棄物が対象となっています。

これらの法律は、オリバーが報告書に掲載した沢山の具体的な法律や簡単な法律の一部にしか過ぎません。プラスチック汚染に特化した国際法を一から作るとすれば、決議されるまでこの先20年はかかると、オリバーは警告します。

「既に存在している海洋汚染に関する数多くの国際法や条例を利用すれば、新たな法案をこの先20年かけて作る必要はなく、今すぐにでもこの問題に関する法的な措置が行えます。」

このような国際法を取り締まることが難しいのは事実です。しかし、民衆の力によって政府にプレッシャーをかけ、国際法で定められている義務を全うするよう要求していくことは不可能ではありません。

「私たちは彼ら(政府)が国際会議で合意した条例を守るよう声を上げなければいけません。」とオリバーは訴えます。

-プラスチック汚染の解決策

オーシャンプラスチック・クライシスサミットの登壇者は口を揃えて「プラスチック汚染の解決策は、海のゴミを取り除くことではなく、プラスチックが海に流れ出さないように止めること」であると強調します。

登壇者の一人であるビアンカ・ジャガーはこれを実現するためにはいくつかの大事なステップを踏む必要がある説明します。はじめに、世界各国がプラスチックの使い捨てをやめることです。プラスチックを使用するときは、捨てるのではなく、再利用することが条件です。そして、より効果的にプラスチックのリサイクル方法を開発する必要があります。特に廃棄物の量が高い発展途上国にも目をむける必要があり、より効率的なごみ回収システムや、プラスチックごみを減らすことに繋がる戦略が必要です。

私たちは何から始めるべきなのでしょうか?登壇者はサミットで現実的な解決策を提案しています。数少ない国で既に行われていますが、多くの国がプラスチックボトルを返却することで返金を受けられるデポジット・スキームを導入することが必要です。例えば、ノルウェーでは、消費者がドリンクを購入するごとにプラスチックボトルのデポジットを支払い、空ボトルを回収マシーンに入れると返金がされるというシステムを導入しています。スコットランドでも近々このスキームと似たようなシステムを導入する可能性があります。ゼロ・ウェイスト・スコットランド(Zero Waste Scotland )がスコットランド政府と協力しながらこの案を実現するために現在アクションを起こしています。

何よりプラスチックの問題で重要なことは、パッケージや商品のデザインの見直しです。プラスチック商品やパッケージをデザインする段階で、いかに環境への影響が少ないものにするのか意識することがこれから先、重要となるでしょう。

「製造されるパッケージはすべてリサイクルされるべきです。リサイクル不可能なパッケージを作ることなんてナンセンスでしょう。」と話すのは、Nextekというプラスチックのリサイクル解決策に取り組んでいる団体の業務執行取締役を勤めるエド・コシオール教授です。

サミットに参加したすべての人がプラスチックフリーな世界を願っているわけではありません。複数の登壇者は、プラスチックには重要な役割があると断言しています。例えば、食料廃棄問題は、プラスチック包装を使った商品を長く使えば、廃棄を減少させることができるとしています。しかし、そのプラスチック包装は、リサイクル可能な素材である必要性があるとある登壇者は議論します。そして何よりも、適切な方法でリサイクルされるべきであると話します。

シリアス・ビジネスのディレクターであるウィレマイン・ピータズは、プラスチックは果たして本当に必要なのかという問いを投げかけます。そして、もし私たちの生活の中でプラスチックが必要あるのであれば、バージン素材の使用を避けることができないのかを提案しています。

ウィレマインがプラスチックが潮の流れとともに入っていく様子を説明しながら、彼女はこう言います。
「あふれ出す蛇口に対してどうすればいいのか。それはその蛇口を止めることなのではないでしょうか。」

ウィレマインはもっと沢山の企業が変革をリードする様子をみたいといいます。そのため、シーリアス・ビジネスは プラスチックスキャン(Plastic Scan)を開発しました。どんな企業でもプラスチックの消費量を分析して、適切な改善策を提案するオンラインツールです。何をすべきなのかわからない、どこから始めたらいいかわからない、なんていう言い逃れができない時代になったのです。

-潮目を変える

「将来の考古学者が20世紀や21世紀の遺物を見たとき、どんな物を発見するのでしょう?私たちがプラスチックで作られた地球上で生活していた痕跡が残っていることは明らかでしょう。」
サミットの講演会で廃棄物資源行動計画(Waste and Resources Action Programme,WRAP)のディレクターであるピーター・マッドックスは断言しています。

開発当時のプラスチック素材の低価格、耐久性、多用用途は非常に魅力的でした。しかし、その魅力が今となっては私たちのプラスチックの嫌うポイントとなっているとピーターは言います。

「私たちは長い間努力を続けてきましたが、まだまだやらなければいけないことが沢山残っています。」

オーシャンプラスチック・クライシスサミットは沢山の解決策を生み出しましたが、議論はまだまだ続きます。サミット後には、海洋プラスチック問題を解決するために集まった科学者、学者、サスティナビリティの専門家、ジャーナリスト、そして草の根団体の活動家たちが、政策、テクノロジー、地域別でできるアクションを提案することに取り組んでいます。

このチームは、適切な専門知識があるだけでなく、地球を守るための情熱を持ったチームでもあります。このチームの動向を待つ中、残る疑問は一つ。果たして、世界のリーダーは耳を傾けるでしょうか?

海洋プラスチック汚染の解決策について詳しくはこちらから。

Photo courtesy of David Jones @justoneocean

「プラスチックに沈む地球」特集ページはこちら

「将来の考古学者が20世紀や21世紀の遺物をみたとき、彼らはどんな物を発見するのでしょう?私たちがプラスチックで作られた地球上で生活していた痕跡が残っていることは明らかでしょう。」ピーター・マドックス、WRAPディレクター

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