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タトゥーは人を繋げるメディアだ「Tattoo Friendly」運営 川崎美穂さん

長年タトゥーの変遷を追い続け、現在はタトゥーOKな入浴施設の地図サイト「Tattoo Friendly」を運営している川崎美穂さんは、タトゥーはメディアであると語ります。タトゥーの在り方が、人と文化や歴史だけでなく、人同士のコミュニケーションを繋ぐ役割になるといいます。

【タトゥーはメディアだ】

 

ー川崎さんにとって、タトゥー文化とは?

タトゥーは「メディア」なんです。情報がたくさん詰まった、もっとも原始的なソーシャルメディア(*)だと思っています。

 伝統的なデザインには、その国の歴史や社会、人々の暮らしが反映されています。また、その人自身がどんな生活をしてきたか、何が好みかなどの個人史も映しだします。

 例えば、日本の伝統刺青には日本の文化と歴史が流れ込んでいます。日本の刺青って、背中から肩周りから腕、脇腹から太ももへとぐるっと覆うようなデザインですよね。どうしてこのスタイルなのかというと、着物を羽織ったときに、はみ出さない形だからです。

 このような着物に隠れるアイデアは、江戸時代に庶民の贅沢を禁止した「奢侈禁止令(しゃしきんしれい)」のお触れが背景にあります。衣服の素材や色まで制限された庶民たちは、表向きは地味な着物でも、裏地に趣向を凝らすなど、隠れたところに贅を尽くすことで粋を競い合い、幕府の厳しい制約に対抗しながらも暮らしを楽しんでいました。

 着物の暮らしに創意工夫があったからこそ、刺青文化にも身体を包むようなデザインが生まれたんですね。現在のように手首や足首まで彫るようになったのは、洋服を着る暮らしに変化したことが影響していると思います。

ー日本以外の地域でも、タトゥーに独自の背景があるんでしょうか?

 多数の国が地続きのヨーロッパでは、オノやノコギリなら「大工」、コンパスなら「家具職人」など、職人はひと目で職業がわかるタトゥーを入れていた時代がありました。また、探査船の船乗りが上陸した地で航海の記念に、その土地のタトゥーを入れるようになり、その慣習は今でも海軍兵たちに受け継がれています。欧米の人が旅行先でお土産としてメモリアルなタトゥーを入れるのも、こうした文化背景の影響があります。

 ニュージーランドの先住民族マオリは「モコ(moko)」と呼ばれる曲線や螺旋状のタトゥーを、男性は顔やヒップに、女性は唇から顎にかけて入れます。これは自分の血統や社会的役割、また祖先や神、母なる大地とのつながりを意味し、マオリ族の一員としての誇りです。

 タイの寺院で行われている「サクヤン」は、僧侶、もしくは呪術的な力をもつ者によって行われるタトゥーです。希望者の願望に合わせたモチーフを適切な部位に彫り入れ、最後にマントラ(呪文)を唱えることでタトゥーに聖なる力が宿ると信じられています。

  一方で、ナチス・ドイツ時代には、アウシュヴィッツ収容所に入れられた人に囚人番号のタトゥーを強制的に行っていたという、直視しがたい残忍な歴史がありました。また、中米のギャングのあいだで流行している顔面のタトゥーにはギョッと驚かされると共に、彼らの生きている過酷な社会環境へ目を向けるきっかけとなったのです。

 このように、世界のタトゥーを追うことで、現実に何が起きているのかも知ることができます。時代や国境、言語を超えたメッセージとして受け取ることができるのです。

 

ー歴史や文化とタトゥーは深く結びついているんですね。

 タトゥーの歴史は、人類の進化の歴史であると言っても過言ではありません。人類は、お金や宗教、農業、国家という「文明」を誕生させる前から、タトゥーを行っていました。

 アルプスの山で氷河のなかに凍って発見されたアイスマンと呼ばれる5300年前のミイラには、全身に61個のタトゥーがありました。調査の結果、アイスマンのタトゥーは、病気や怪我の痛みを和らげる「治療」のために行われていたことがわかっています。タトゥーの位置から、アイスマンの生活は、狩猟採集民族ではなく、農耕牧畜社会の一員で、ときに重いものを運びながら絶えず移動する〈交易・行商〉に携わっていたと推測されています。

 アイスマンは45歳でアルプスの山中で他殺されたことで人生の幕を閉じるのですが、怪我や病気に耐えながらも仕事に従事していた生前のアイスマンの姿を想像すると、なぜだか同情的な気分になるんですよ(笑)。アイスマンは中年の働き盛りであり、それなりにカラダにガタがくる年でもあるでしょ。腰痛や膝間接の痛みに耐えていたようですが、いまの自分と同い年ということもあり、他人事とは思えない(笑)。とても親しみを感じます。

ーもしもミイラにタトゥーがなかったら、気づけなかった考察ですね。

 テクノロジーの発展が肉眼では見えづらかったタトゥーを解明したのです。そこまでしてタトゥーの謎を紐解く理由は、タトゥーが人類の歴史を紐解く重要なキーであると同時に、過去と現代を繋ぐ架け橋として研究されているからです。

 タトゥーって、実はすごく面白いんですよ。人類の壮大な進化とともにあるタトゥーの歴史は、掘っても掘ってもキリがありません(笑)。だから、偏見やイメージだけでタトゥーの全てが拒絶されてしまうのは、とても残念なことだと思います。

【コミュニケーションツールになるタトゥー】

 

ー川崎さんの右腕に入っているタトゥー、すごくカラフルでかわいいです。波際には人の横顔のだまし絵があったり、イエローサブマリンが浮かんでいたり。そのアイデアはどうやって思いついたんですか?

 テーマが「カワイイ」なんです。80歳になっても「カワイイ」と言ってもらえるデザインをという、無茶なオーダーを(笑)、名古屋のタトゥーアーティストGENKOさんが叶えてくれました。

 全体のテイストは、アメリカの美術家ピーター・マックス調です。これはわたしの希望でした。そこへGENKOさんは、肩から手首にかけて空から海底を描き、天地のなかに物語を構成する、日本の刺青のルールを用いています。

 日本刺青の特徴には、絵に背景があることがあげられます。海外のタトゥー文化は、上陸した先でワンポイントのタトゥーを1つずつコレクションしていくセーラーのスタイルなので、モチーフの後ろに風景という概念はありません。全体を統一したテーマでストーリーを展開させられたのは、日本刺青のように腕を一本丸ごとオーダーしたから出来たことです。

 また、GENKOさんと相談して絵とタトゥーの違いをうまく利用しています。平面のキャンバスと違って、カラダは立方体をしており、皮膚は動くし、関節も曲がります。だから動かすたびにタトゥーのイメージや表情が変わるところもポイントです。立体の装飾として緻密に計算されているところが、絵画とは異なるタトゥーならではの面白さの一つです。

 あとは、黒い影で立体感を作るのではなく、カラーのグラデーションだけで奥行きを描いているところは、彫師さんの技術の高さと作家性の賜物です。カラーのグラデーションは、とても難しく面倒な作業ですが、明るい印象を与えてくれるのでとても気に入っています。

 

ー個人のこだわりもタトゥーに現れるんですね。

 アイデア次第で遊ぼうと思えばいくらでもイマジネーションで遊べるし、知れば知るほど本質を生かしたタトゥーにしたくなるんですよね。

 私の右腕のタトゥーは、雑誌が10年存続したとき、記念に「いっちょ入れるか!」みたいな気分で決めたものですから。意外かもしれませんが、絵柄にはあまり意味を求めすぎなくてもいいんです。個人的には、それぞれ思い入れは胸に秘めて、他人に知らせなくたっていいと思っていて、大切なのはモチーフのもつ意味より、入れるタイミングが重要だと考えています。だから、タトゥーはこうあるべきとの思い込みではなく、もっと自由に、創造的なアートとしてのタトゥーを楽しんでほしいですね。

ータトゥーをしたことがない人と、タトゥーをしている人を繋ぐ鍵はなんだと考えますか?

 人類には、タトゥーが「ある人」と「ない人」の2タイプしかいないと言った人がいました。要は、タトゥーがある人もない人も、人間の本質的な部分は変わらないという意味です。

 ただ、タトゥーがある人同士は打ち解けるスピードがすごく速いんですよ。言語が違っても、タトゥーを見るとなんとなく仲良くなれたりするんですよね。つまり、タトゥーもコミュニケーションツールのひとつなんです。音楽やダンス、スポーツなどにも通じますが、本来カルチャーの世界って、そもそもそういう性質ですよね。人と人がつながる、人と世界とがつながる。

 だからファッションとしてカッコイイかどうかだけではなく、学術的に世界のタトゥーについて知る機会がたくさんあればいいなと思います。まずは、知ることが大切なんじゃないですかね。その結果、多様性にも寛容になり、みんな好きなことを生き生きと追求できる社会になればいいですよね。

 

*:ソーシャルメディア(英語: Social media)とは、誰もが参加できる広範的な情報発信技術を用いて、社会的相互性を通じて広がっていくように設計されたメディアである。双方向のコミュニケーションができることが特長である。

 

タトゥーOKな公共浴場の案内サイトを作ったきっかけとは。前編はこちら

日本でのネガティブなタトゥー認知を解決するためには?後編はこちら

 

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