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FEATURED

葦(ヨシ)活用による猪苗代湖の水質浄化

もうすぐラッシュのクリスマス商品発売の季節がやってきます。ラッシュのバイヤーたちは、真夏の時期からクリスマス商品やクリスマスギフト商品の資材の仕入活動を行っています。

 「季節の違和感を少しばかり感じながら、原材料や資材を探しますが、さすがに毎年のことなので、季節の違いにはすっかり慣れてきました」と笑って話すのはラッシュジャパンのクリエイティブ・バイヤー、Takashi。「素敵なストーリーをまとったラッピング資材をふんだんに盛り込んだクリスマスギフトを今年もみなさんに届けられることができると思うと、今から楽しみです」と話します。

 そんなTakashiから、最近ラッシュのバイヤーたちが世界中で始めたリジェネレイティブ・バイイングのプロジェクトのひとつである葦(ヨシ)を使った新たな資材「ヨシボックス」について紹介したいと話がありました。今日はこの「ヨシ」について、皆さんに紹介したいと思います。

 

ヨシ?アシ?

 「ヨシ」とも「アシ」とも呼ばれるこの植物は、イネ科ヨシ属の多年草。河川及び湖沼の水際に背の高い群落を形成します。この植物、平安時代頃までは「アシ」と呼ばれていたと言われています。日本書紀に著れる『豊葦原(とよあしはら)の国』、そして平安時代に菅原孝標女により書かれた回想録『更級日記』においても、関東平野の光景を「武蔵野の名花と聞くムラサキも咲いておらず、アシやオギが馬上の人が隠れるほどに生い茂っている」とアシが登場します。時代が経つにつれ、アシは「悪し」を連想させることから縁起が悪いとされ、「悪し」の反対の意味の「良し」に呼び方が変わっていき、「葦原」は「吉原」に名前を変えるなるなどしながら、「ヨシ」という呼ばれ方が広がっていきました。このような経緯により、人により「ヨシ」「アシ」の呼び方の違いがありますが、これは地域差ではなく、このような歴史的背景によるものです。

 

ヨシの機能

 ヨシは条件がよいと、地下茎は一年に約5mも伸び、垂直になった茎は2~6mの高さになり、今年のような暑い夏ほどよく成長します。また、葉は茎から直接伸びており、高さ20~50cm、幅2~3cmで、葉が細いことが特徴です。主に温帯から熱帯にかけての湿地帯に分布して生息するヨシは、河川の下流域から汽水域上部、あるいは干潟の陸側に広大な茂み、ヨシ原を作り、場所によっては最高100ヘクタール(東京ドーム約20個分)に及ぶ生息地域もあります。ヨシは水流の少ないところに育ち、多数の茎が水中に並び立つことから、その根本には泥が溜まりやすいと言われています。このように多くの泥が集まり蓄積する区域は、生分解が多く行われる場所と言うことができます。 また、ヨシの茎は多くの動物の住み処や隠れ場としても利用されます。ヨーロッパや日本を含むアジアでは特に、ヒゲガラ、ヨシキリ、サンカノゴイといった鳥類がヨシと深い関わりを持っています。また、根本付近の泥の表面には巻き貝やカニなどが多数生息し、「アシハラガニ」はこういった環境から命名されています。

  ヨシ群落は、魚や鳥の住み処という役割も担い、コイ、ブナ、ホンモロコなど、多くの魚がヨシに卵を産みつけます。卵からかえった稚魚は、餌場や隠れ家に最適なヨシ群落の中で育ち、ヨシノボリ、スジエビもヨシ群落の中に多く棲息しています。カワニナ、ヒメタニシなどの貝類は、ヨシに付着し、これらを餌にするブルーギルやブラックバスなどの魚もヨシ群衆に近寄るため、ヨシ群落は魚の宝庫となります。また、ヨシ群落は野鳥にとっても重宝される場所。琵琶湖のある滋賀県には約280種類もの野鳥が観察され、カイツブリ、オオヨシキリ、カルガモなどは卵を生んで子育てをし、スズメやツバメはその場所を寝ぐらにします。多くの鳥類または水生動物のよりどころとなるヨシ原は、「自然の浄化作用」の上で重要な場所であり、野生動物と環境保護に重要な植物群落なのです。

 ヨシ群落の自然の浄化作用の一番大きな機能は水質浄化機能で、これは大きく分けると3つのはたらきがあります。    

1. 水の流れを弱くして、水の汚れを沈めるはたらき  
2. ヨシの水中の茎に付着する微生物や群落の土中の微生物によって水の汚れを分解するはたらき
3. ヨシが水中の窒素、リンを養分として吸い取るはたらき

 こうした機能が誇張され汽水地域の水をほとんど浄化していたという誤解をされている方もいますが、様々な要因が絡み合って初めて水質は維持できるため、こうしたヨシの機能は水質浄化の一部であるという認識も重要で「ヨシまかせ」にするのではなく、私たちの生活には日頃から汚い水を流さないことが大切です。

 

移り変るヨシの用途とその歴史

 まっすぐ伸びるヨシの茎は木化し、竹ほどではないにせよ、材として活用できるため、日本でも古来から様々な形で使われてきました。軽くて丈夫な棒としてすだれに、茅葺屋根として屋根材に、また神社の儀式で用いる「たいまつ」として松の木の芯とヨシを一緒に束ねたものにも使用されます。

 また、ヨシのパルプは紙原料として、中国湖南省の洞庭湖周辺や上海市の崇明島などで実用化され、トイレットペーパーや紙コップなどに加工されている他、旧ソ連やルーマニアではヨシのパルプ製造工場が稼動していたこともあり、日本国内においても少量ながら非木材パルプとして昨今ヨシが注目を浴び、使用されています。この他にも、肥料、燃料、食料、生薬原料、漁具、葦ペンなどの用途があり、今でもヨシの用途については研究が進んでいます。

 近年ヨシ原は、浅い水辺の埋め立てや河川改修などにより消失することが多くなりました。ラッシュのバイイングチームでは自然浄化作用を持ち、多くの生物のよりどころとなっているヨシ原の価値を再評価し、ヨシの環境再生、有効活用に着目をし、日本各地でヨシの有効活用をすることで環境にポジティブな影響をもたらせる場所の選定をしてきました。現在、複数箇所あがってきた候補地の一つが福島県にある猪苗代湖です。

 

白鳥の飛来地、猪苗代湖

 福島県の真ん中に位置する日本で4番目に大きい猪苗代湖は、厳冬期に風で飛び散った湖面の波しぶきが周囲の木々などに凍り付くしぶき氷が美しい景観を創り出す美しい湖です。郡山市民の水源の役割も担うこの湖には、毎年10月上旬頃から翌年4月上旬頃まで、シベリアから白鳥が飛来し、羽を休める姿を見ることができます。その数なんと3,000羽以上。猪苗代湖と猪苗代湖に飛来する白鳥は「猪苗代湖のハクチョウおよびその渡来地」として1972年、国の天然記念物に指定されました。また、2008年まで環境省が発表する湖の水質ランキングで1位を獲得していましたが2008年以降、ランク外を続けています。

 猪苗代湖が水質ランキングのトップを飾っていた理由には、水が酸性であったことが挙げられます。水が酸性であると言うことは、貧栄養湖であり、生存するプランクトンやバクテリアの種類や数も少ないことを意味します。これは、それらの腐敗による影響が少なく、水質が保ちやすいと言えます。ところが近年になり湖のpHが上昇し、湖の水質は中性化に向かっています。この原因として酸川の上流にある鉱山跡からの湧水量の変化、有機物を多く含む生活排水の増加など様々な影響が考えられています。最近、猪苗代湖の湖岸には腐敗した植物が黒いタール状の塊となり打ち上げられた姿が多く確認されています。つまり中性化が進むと汚れを凝集沈殿できなくなるだけでなく、湖底に沈殿している汚濁物質が溶け出して水質を悪化させることも考えられます。 現段階では、理由が明確に分かっていませんが、猪苗代の地元住民や市民団体などはこうした事態に湖の環境保全のために生活系や農林水産系排水の規制をひとつの課題として取り組んでいます。私たちバイヤーは現地を訪問し、汽水域でのヨシの管理について地元の方々とたくさんの話を持ちました。そして、ヨシがもつ水質浄化の働きを最大化させる為のプロジェクトをスタートさせることにしました。

 先述の通り、水質浄化機能があるヨシは多年草ですが、一年で根以外の草の部分が枯れるため、水から窒素やリンを吸い上げ枯れたヨシは湖畔に倒れてしまいます。そうすると、そのまま生分解がはじまり、大量の微生物が発生し、せっかく吸い上げた汚染物質を湖に戻してしまうことになります。そのため、汚染物質の吸い上げが完了したヨシを刈り取り、商品化できないか、と考え始めました。こうして、刈り取ったヨシをパルプ化し、古紙と混ぜ合わせ、紙を作ることを決めました。

 

紙の常識を越える非木材パルプと素材の多様性

 ラッシュでは、紙といえば木材由来、という常識にとらわれない非木材パルプの紙を多く扱っていますが、紙=木がダメという発想ではなく、その材料が社会や環境に効率よく良い影響を及ぼすことが大事だと私たちは考えています。木材であってもそれが達成されれば良い材料としてラッシュが使用することもあれば、木材以外で紙を開発することで素材の多様性をもたせることも重要です。

 今回ラッシュで開発に至ったヨシのパルプを使った「ヨシボックス」は、クリスマス限定のギフト商品に使われています。生物多様性の再生を目指しながら、贈る人も貰う人にも環境にとってもハッピーなギフトをこの冬の皆さんにお届けできることを嬉しく思います。

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