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難民を歓迎します:変革への乗り物

イギリスは、ある日記をつけ続けています。そして、あるアーティストはその書き込みを追い続けています。

2016年6月24日(金)、Brexit(英国のEU離脱)が決定した日
「大英博物館では、投票結果のせいでその日記は怒りにあふれました。」

2016年9月17日(土)ロンドンでの大規模なデモが実施された日
「ロンドンでの難民デモで、その日記は希望に満ちました。まだ望みはある。」

イギリスのゴーストライターの書き込みは、風変わりなトラックの中で行われています。アーティストのアルケタ・ザファームリパが生んだ「Refugees Welcome(難民を歓迎します)」は、アクティビズムを運転席に乗せたアートインスタレーションです。ドアを開けてみると、一見パッとしない運送トラックの中が、典型的なイギリスのリビングのようになっています。アルケタはそれを「私の記憶の中の『イギリスへようこそ』への入り口。どんな背景がある人も来ることができて、腰を下ろし、自分の物語を共有できる安全な場所です」と表現します。

ラッシュ

「皆、難民になった自分たちの物語を語ってくれます。どうやってここにたどり着いたか、イギリスが自分たちにとって何を意味するか。」とアルケタは言います。彼女自身は学生としてロンドンに来ましたが、母国での戦争で帰国ができなくなり移民となりました。

コソボ生まれのアルケタは、1990年代後半のコソボ紛争中、イギリスの赤十字で働いていました。「イギリス人がコソボ人を迎え入れた姿に感動しました。私たちが働いていたリバプール、マンチェスター、その他の街から衣服の寄付があり、窮屈に感じないようにしてくれました。皆、コソボの人たちが、ただ安全と普通の生活を望んでいるということを分かってくれました。」

「20年経った今、世間の状況は違います。政治的見通しが変わりましたが、難民に対する考え方も感じ方も変わりました。イギリスは世界で強制移動させられた何百万人ものほんの一部しか受け入れていないにも関わらず、『もう受け入れの余地は無い』という声を耳にします。必要に迫られている人たちを快く受け入れることは、人間としての基本的行動であることを忘れてしまったのです。」

「Refugees Welcome(難民を歓迎します)」という彼女の作品は、あらゆる意味で変革の手段になろうとしています。これはアルケタが初めてイギリスに来た時に体験した連帯感を再度表現しようとしたもので、同時に難民に対する人間の闇の部分、恥じるべき反応を映し出しています。これは彼女がフランスのカレーを訪れ、ドーバー海峡を横断する乗り物に飛び乗ろうとしている人たちを路肩に見かけたときに思いつきました。

「トラックはより良い未来へのシンボルですが、その途中で窒息死や凍死してしまう人にとっては棺おけでもあります。」

アルケタのアート作品は、こうした衝撃的な対比を描くことに代表されます。2015年の6月、コソボの首都プリスティナにあるメインサッカースタジアムに、コソボ紛争で性的暴行の被害に遭いながらも生き延びた人たちを称え、5000枚の服をタペストリーとした心に訴える展示をしました。「長年、コソボ紛争で性的暴行が武器の一つとして利用されたことは知られていましたが、昨年サッカースタジアムに5000枚の服がつるされた時、その事実から目をそらすことは無理でした。現実に向かい合ったのです!」

国内避難民となりながら、自宅で性的暴行にあった市民の話を聞いたアルケタは「被害者の声が聞き届けられるまで、16年もの時が流れました」と言います。Human Rights Watchの報告によると「さまよい歩いたりトラクターに乗ったりした」とあり、暴行は臨時の避難所でも起こりました。

国内では、暴行の事実が知られると悪いレッテルが貼られます。コソボ議会は2014年に性的暴行を受けた人たちを戦争の被害者と認定する動きをとり、損害賠償認定へとつながりました。しかし依然として一件も賠償金は支払われていません。アルケタは法律は「施行待機状態だ」と言います。「いつまで待てばよいのか?と聞きたいです。」彼女は声なき人たちの声を記録することを得意とし、言葉が言い表せないことを「言う」ためにアート作品を生み出しています。

何よりもまずは耳を傾けます。この「聞く」ということを彼女は今イギリスで行っています。今までになく膨らみ続ける難民の生活史と、それをとりまく議論を生み出すためです。

「この日記がいっぱいになったら、きっと他の何かに発展するでしょう。その中身を新しい展示にしようと思います。」

「Refugees Welcome(難民を歓迎します)」のインスタレーションは、移民や難民を支援し、彼らに関するアートを製作・推進するCounterpoint Artsが権利を所有しています。近年のコラボレーションや今後のイベントは以下からどうぞ。

http://counterpointsarts.org.uk/

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