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プラスチックに沈む地球 - この状況を水際で食い止める

世界中で今、国境を越えて海のごみが問題になっています。

国際問題であるプラスチックごみによる海洋汚染。日本政府も国際社会の一員として世界の動きに追いつくため『海洋プラスチック憲章』へ署名することを求めます。

 海岸や河口ばかりか、海中にも大量のプラスチックごみが漂い、死んで打ち上げられたクジラやウミガメの体からたくさんのプラスチックごみが発見されています。さらに、もはや回収できないサイズと数量になってしまったマイクロプラスチックなど、プラスチックによる海洋汚染の問題は、連日報道されています。

 国外から来たごみが国内から出たごみに混じって日本の海岸で見つかることがあるように、日本からもごみは外洋に流れ出し、ハワイや北米大陸の太平洋に面した海岸などにも漂着しています。私たちのごく身近なごみの問題は、私たち自身の問題であり、同時に世界の問題でもあるのです。そこに境界線は存在しません。海のプラスチック汚染は、こうしている間にもまた広がっています。そんな今だからこそ、この状況を水際で食い止める必要があるのです。

2018年9月、このような状況で水際にいる私たちにもできることがあると信じ、ラッシュでは一般社団法人 JEANと「国境なき海ごみ」キャンペーンを実施します。今回、このキャンペーンを一緒に展開するJEAN事務局長の小島あずさ氏に、なぜ今日本政府が「海洋プラスチック憲章」に署名することが必要なのか、聞いてみました。

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【海ごみのほとんどが生活ごみ。日本から流れ出たごみは太平洋を渡る】

 一般社団法人 JEANは30年近くにわたってずっと、海洋ごみ問題に特化して取り組みを続けてきました。主な活動の一つとして国際海岸クリーンアップ(ICC)を日本で主宰しています。ICCには、世界中から100を超える国と地域が参加し、ごみを拾ってきれいにするだけではなく、集めたごみを記録して調査しています。その調査結果からは、海岸の漂着ごみの70-80%が、海辺のレジャーや漁業などのごみではなく、私たちの生活からでた日用品のごみであることがわかっています。

 日本では、ごみの回収や分別等のルールが自治体ごとに細かく定められ、ほとんどの人はそれを守っています。とはいえ、歩きながらの飲食や喫煙によって散乱したごみや、ごみ集積場所をカラスが荒らすなど、回収ルートからそれて散らかってしまうごみもあるのです。それは全体のうちのごくわずかな割合かもしれませんが、雨や風で低い場所へと移動し、排水溝から川へ、そして海へと流れていきます。流れてきたごみが次々と打ちあがる海岸では、ごみの密度は驚くほど高くなります。

 

【G7では2015年に海洋ごみ問題への行動計画を発表、3年を経て行動宣言へ】

 2014年に国連環境計画は、世界の新たな環境問題として「プラスチックによる海洋汚染」を報告しました。翌2015年にドイツで開催されたG7エルマウ・サミットでは、この問題が首脳宣言に盛り込まれ、対処のための行動計画が付属書として採択されました。経済協力や安全保障を主な課題とするG7サミットで、世界的課題として海洋ごみ問題が取り上げられるようになったのです。このことは、プラスチックによる海洋汚染が深刻で、緊急に取り組まなくてならない課題であるとの、国際的な共通認識に他なりません。

 翌年、安倍総理大臣が議長を務めたG7伊勢志摩サミットでも、海洋ごみに対処することが再確認され、2018年6月、カナダ開催されたG7シャルルボア・サミットでは、プラスチックごみによる海洋生態系等への深刻な影響を懸念し、「健全な海洋及び強靱な沿岸部コミュニティのためのシャルルボワ・ブループリント」の付属書で「海洋プラスチック憲章」が提案されました。これは、海岸でのごみの回収活動に加えて、不必要な使い捨てプラスチック製品の削減、2040年までのプラスチック容器のリサイクル率100%達成など、プラスチックごみの削減に踏み込む発生源対策を世界規模で促進するための行動宣言です。

 2015年の行動計画の採択を受けて、国内対策を進める努力をしてきた国々はこの「海洋プラスチック憲章」に署名しましたが、日本と米国は拒否しました。行動計画の採択から同じ3年という時間があったにもかかわらず、日本政府が述べた拒否の理由は「国内法が整備されておらず、社会にどの程度影響を与えるか現段階でわからない」。時を同じくして、国会では議員立法によって、新たにマイクロプラスチックの使用抑制が盛り込まれた『改正海岸漂着物処理推進法』が全会一致で成立しています。

 

【G7以外の国々も次々と対策を進めているが、日本は?】

 日本は世界第6位の排他的経済水域(EEZ)を持ち、多くの海洋資源の恩恵を受けていますので、海洋環境の保全に積極的に取り組む責務があります。国連環境計画が2018年6月に発表した報告書には、すでにプラスチック汚染対策を行っている60を超す国々の取り組みが紹介されていますが、残念なことに日本の名前はそこにはありません。そして日本が、使い捨てプラスチックごみの1人あたりの発生量が世界第2位であることが載っています。

 G7シャルルボア・サミットでの、海洋プラスチック憲章への署名拒否は、多くの批判をもって受け止められ、報道各社は社説などで厳しい論調で指摘しています。その後日本政府は、2019年6月に大阪で開催されるG20首脳会合までに、具体策や数値目標を盛り込んだ「プラスチック資源循環戦略」を取りまとめ、「海洋プラスチック憲章」に書かれている各種の対策目標を盛り込みたいと表明しました。海洋プラスチック憲章に数値目標が掲げられていることを、日本が署名できなかった理由とする見方もでていますが、この数値目標には義務はありません。達成に向けて努力してゆくべき重要なものですが、罰則規定もない「目標」なのです。国内での具体的な対策を進めてゆくためにも、G7メンバーの国としてまずは署名をして、G20でより多くの国々とともに、この取り組みを進めてゆけばよいと思います。

 日本政府はこれまで3Rイニシアチブとして、Reduce(ごみを減らす)、Reuse(再利用する)、Recycle(リサイクルする)の3つのRを国内外で推進してきたと胸を張っています。しかし実状としては、この3つのRの中で最も重要なReduce推進は遅れており、もっぱらRecycleに注力してきました。使い終わったものとごみとして終わらせずにRecycleするのは大切なことですが、当然のことでもあります。ReuseやRecycleをいくら進めても万全ではなく、Reduceにこそ力をいれなくては効果は限られてしまいます。日本以外のG20メンバーの国々は、すでにReduceを進めていくことに軸足を移していっています。

 リサイクル率が高いものでも、100%ではありません。数パーセントの、リサイクルルートにのらなかったもののうちの、ごくわずかな割合が環境中に散乱ごみとなって出てしまっただけでも、すでに海はプラスチックごみで溢れています。販売量や使用量が増えれば、回収できずに散乱ごみになってしまうものも増加します。

私たち人間が、「夢の物質」といわれたプラスチックと出会ってから100年以上が経ちました。技術開発が進み、安く大量にプラスチックを製造・使用できるようになってからでも50年が経過しています。たった50年の間に、私たちは海や海の生きものに対して、あまりにも無神経なふるまいを続け、海をプラスチックのごみだらけにしてしまいました。世界中で喫緊の課題となっているプラスチックによる海洋汚染は、数十年前からの私たちの暮らしのつけです。

 プラスチック汚染対策で大きく出遅れている日本が、国際社会の動きに追いつくためにはまずは「海洋プラスチック憲章」に一日も早く署名することが第一歩です。

私たちには、水際でできることがあります。日本政府が国際社会の一員として『海洋プラスチック憲章』へ署名することを求めるために、あなたの声が必要です。(Chage.orgの署名ページへ移動します)

一般社団法人 JEAN
ごみのないきれいな海を未来に残すため、海洋ごみ問題に取り組むんでいます。クリーンアップをはじめ、NGOや研究者、企業や行政の担当者などが、海のごみをなくすために知恵を出し合う国際会議を開いたり、調査研究、情報発信、環境教育など、海のごみをなくすためのさまざまな活動を、国内外の仲間たちと一緒に進めています。現在2018年6月、カナダで開催されたG7で日本とアメリカが「海洋プラスチック憲章」の署名を見送ったことを受け、政府に対し「海洋プラスチック憲章」へ の署名を促す活動を行っています。

 

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2018/9/12

#国境なき海ごみ

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