FEATURED

“レントレス”という生き方 - タチョワ・コヴィントン

タチョワと過ごした時間の中で、サイモンにとって一番印象的だったのは「俺は一度も“ホームレス”になったことはない。 “レントレス(タダ暮らし)”な男になっただけだ」という一言でした。

「あんたが俺の映画を撮る夢を見た」

これがタチョワ・コヴィントンがハル・サンプルズに発した最初の言葉でした。Gorilla Perfume Volume IVのインスピレーションとなった写真家のハルは、この時休暇中で、友人とロサンゼルスを訪れていました。一人や二人ではなく、多くの親しい友人を亡くし、ひどく心を痛めていたハルにとってこの休暇は、全てを忘れて心を休める予定でした。

自分の夢に出てきた、と他人から言われる場面に遭遇することはそう多くはないでしょう。だからこそ、ハルはこの男に惹かれました。

“ローラーボール”という名でも知られるタチョワ・コヴィントンは、ハルを家に連れて行きました。その家とは、ロサンゼルス郊外にある放棄された給水タンク。外から見ればどこにでもあるような給水タンクですが、一歩その中に入れば、そこにはタチョワの個性、創造性、忍耐力が壁一面から溢れ出るものでした。家具、美術品、そこにある一つ一つのアイテムが”ローラーボール”によって発見されたり、創り出され、タンクを家に姿を変えていきました。これは、ゼロから何かを生み出すことを実証するこの上ないストーリーでしょう。

「多くの人は誰かの給水タンクに行きたがったり、刀を振りかざすような役者だった男(実話です)とはつるんだりしないでしょう。」とハルのことを語るのはラッシュの調香師のヘッドであるサイモン・コンスタンティン。何が起ころうとも、タチョワについての映画をハルが作るという、タチョワの夢を現実ものにしなければいけないということは、ハルにとっては明らかだったと言います。
 

当初ハルは、どんな山あり谷ありの旅路に放り出されたのか分かりませんでしたが、その旅は決して退屈なものにならないことだけは明らかでした。ハルは、タチョワと彼の友人と一緒に、色々な会話をしながら、タンクの中でよく一緒に楽器を演奏しました。その間、ハルは撮影を続け、その様子を映像として残すことを怠りませんでした。このストーリーに変化が起きたのは、2011年。名高いアーティスト、バンクシーがタチョワの暮らすタンクの外側にデザインを残しました。

“THIS LOOK A BIT LIKE AN ELEPHANT”
(ちょっと象みたいに見えるよね)

バンクシーが最初に外からこのタンクを目にしても、その”象”の中にどんな世界が広がっているかを想像することはできなかったでしょう。しかし、バンクシーがここに来たことをきっかけに、タチョワの生活は大きく変わってしまうこととなります。バンクシーがタンクにペイントする60日前、市の再開発計画によりタチョワにはタンクからの退去命令が出されていましたが、タンクにバンクシーのペイントがされたことで、この給水タンクを守りたいタチョワの戦い(タンクバトル)へ世の中の注目が集まりました。「人生で何より多くを費やしてきたんだ」とタチョワは言います。

「これはただの給水タンクではなく、アートの作品なんだ。だから人に何かを伝える方法なんだ。」

そんな中、どんな状況だろうと、どれだけ注目が集まったとしても、バンクシーがここに現れようと、現れなかろうと、タチョワは自らの家から退去せざるを得ませんでいた。

このストーリーはタチョワの人生を追っているだけではではなく、アートの真の意味を問うています。著名なバンクシーは、給水タンクを誰が見ても価値あるものに変えました。ハルの友人で一緒にロスを旅しながら、タチョワと時間を過ごしたディラン・ホリングスワースは言います。

「この給水タンクは、世の中から”アートだ”と認識されるずっと前から、すでにアート作品としてそこにあった」と語ります。「他の人にも、このサステナブルなライフスタイルで、都市でどのように生きていくか、素晴らしいペインティングなど、このタンクが持つ美しさや不思議な力を見出して欲しいのです。」

タチョワの人生から生まれるアートはこれに止まりません。彼のストーリーは演劇というアートに変形し、2013年にエジンバラで開催されたフリンジと呼ばれるアートフェスティバルに出演しました。ハルは、タチョワをエジンバラに連れていき、自身が主役となった演劇を自分の目で見ることにかなりの説得と時間を要しましたが、これは感情的な日となりました。2013年、同じエジンバラでGorilla Perfume Volume IIIのギャラリーを開催していたところにタチョワが自分でラッシュのスタッフに向けて、パフォーマンスを行うチャンスが舞い込んで来ました。

サイモン・コンスタンティンは、この時エジンバラで初めてタチョワと出逢いました。その後2015年、サイモンはタチョワの家を訪ねます。

「タチョワはとてもホスピタリティに溢れる人です。ホテルではなく自分の家に滞在して欲しいと言います。家はとても綺麗で、自分で作りたいものを集め、一からそれを作り出す。彼は他者にインスピレーションを与える人です」

タチョワと過ごした時間の中で、サイモンにとって一番印象的だったのは「俺は一度も“ホームレス”になったことはない。 “レントレス(タダ暮らし)”な男になっただけだ」という一言です。”レントレス”な人生を送るタチョワは私たちに大切なことを教えてくれます。私たちが何者であろうとも、どんな状況にいようとも、誰しもがゼロからものを生み出すことができる、そんなインスピレーションを与えてくれる男なのです。
 

"I'm not homeless man, I'm a rentless man."

コメント (0)
0 件のコメント
この商品を見た人は、こちらの商品も見ています。(1)

関連商品

1 項目
Exclusive
tank-battle-perfume
パフューム
自由と創造力を守る芸術作品
¥4,700 (税込)
 / 
30ml