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自然と調和するたむそん自然農園の野菜作り

丹沢山系の山並みや相模川、中津川、宮ヶ瀬湖に囲まれた自然豊かな農園、たむそん自然農園で育てられたじゃがいもやパセリ、フェンネルなどの野菜は、収穫後すぐにキッチンに届けられ、ラッシュの商品に使われます。7月のある日、食を通じたコミュニティづくりに取り組むオオヤマタカコ氏が、野菜がのびのび育つたむそん自然農園の野菜作りの真意を探りに、畑を訪れました。

 ラッシュにとって心臓部とも言える製造拠点、キッチンは神奈川県のちょうどど真ん中に位置する愛川町にあります。そして同じ町内、キッチンから車で15分ほどの場所にある「たむそん自然農園」は自然農法という特徴的な農法で野菜を育てています。

 自然農法という農法、聞きなれない人も多いかもしれません。「農薬や肥料を与えない」「畑を耕さない」「除草しない」ことを特徴とする自然農法は、畑も自然の一部であることを理解しながら、時間をかけてゆっくり野菜を育てることを優先する農法です。

 たむそん自然農園の園主である田村吾郎さんは、朝顔の色の研究など少年時代から自然のはたらきについて研究・実験することを愛し、東京農業大学で発酵学を学び修士号を取得。卒業後、食や人間の調和など、本質的な生活や人生の豊かさについて実践したいとレストランのシェフ、有名ホテルのフロントマン、港の荷揚げなど多様な職業に従事しますが、その中で目の当たりにした食の安全性や透明性における疑問から、農業を始めることを決心します。自分が納得行く農法を模索し、行き着いたのがこの自然農法だったそうです。なぜ田村さんは既存の農業の在り方や考え方とは大きくかけ離れてたようにみえる、この自然農法という方法で野菜作りを行っているのでしょうか。田村さんは、「自然農法はバランスをとれた無理のない生活を人間が行うために必要なもの」だと答えます。

 笑いながら、時に冗談を交え、朗らかにお話をしてくださった田村さん。確かにそこには無理や緊張感がなく、ありのままの状態であることを感じます。農園を見渡すと雑草と混在しながらも元気に力強く生えているパセリや「生きてます!」と主張せんばかりに広々と葉を伸ばし成長するズッキーニ、小さい頃田舎で食べたようなトゲトゲがたくさんあるキュウリなど今の季節が旬の野菜がそれぞれの時間軸で、のびのびと自由に成長していました。筆者は食に携わる仕事もしているので、よく農家を訪れる機会がありますが、これほどまでに「全ての野菜が均一な形でたわわに実っている」状態ではない農園を見たのは始めてかもしれません。野菜にも土壌にも無理をさせないで育てていることって、こういうことなのです。

 「慣行農法は、人間を中心に考え、生産性を優先した農法。結果として自然にも野菜にも負荷をかけている」と田村さんは話します。畑に生える雑草を刈るには時間や手間がかかる。だから野菜を育てる農家は、農薬を散布して、畑のうねにマルチという黒いビニールを被せ、雑草が生えてこないようにする。野菜がよく成長するようにと肥料をたくさん入れすぎた結果、メタボのような状態になってしまった野菜は弱くなり、病気にかかりやすくなってしまう。また、メタボな野菜は糖度が増し、その結果虫が寄ってくるため、害虫から野菜を守ろうと殺虫剤でその虫を殺す。現在農業のスタンダートになっている慣行農法では、「手間とお金をかけずに野菜を育てたい」という人間の欲が先行し、野菜が自然のまま成長できない状況を作り出しています。結果、野菜は不自然な状態を修正しようとする力が生じ、それによって人間が野菜を育てるにあたり不都合となる新しい問題を起こし、それを今度は人間が無理やり封じ込めようとする。短期的には一見問題が解決したように見えますが、長期的に見るとこれはその場しのぎにすぎず、最終的には野菜だけではなく、その土壌さえも疲弊させてしまいます。慣行農法では通常、野菜を育てた後の農地を休ませる時間を設けます。しかしたむそん自然農園では、野菜にも土壌にも無理をかけずに、自然の摂理に沿って、ありのままに育てるため、この休ませるプロセスが必要ありません。野菜や自然が発している信号を受け止めて、必要であれば人間がサポートする。そんな姿勢が田村さんから感じられました。

 たむそん自然農園では農薬も肥料も散布せず、自家採種をすることで野菜もその環境に順応していきます。例えば、ほうれん草はアルカリ性の強い土を好みますが、関東地方の土はその真逆で酸性が強く、本来ほうれん草が育ちにくい環境だそうです。一般的な慣行農法でほうれん草を育てる場合、土に石灰を混ぜて無理やり酸性からアルカリ性にした土壌で育てるそう。環境をほうれん草が好むように整えることで立派なほうれん草が育ちますが、これでは土に無理をさせている状態。自然農法では土をそのままの状態で種から育てると言います。1世代目はうまく育ちません。それでもその中からよく成長したほうれん草の種を採取し、2世代目につなぎます。ほうれん草の遺伝子は前の世代での環境条件を種に封じ込め、次の世代につなぐ。「そうすると世代を追うごとに、ほうれん草がその土地に馴染んで生きる力を強めていき、風土に合う固定種の野菜ができます」。

 もしかすると農薬や肥料を使った農法のことを「慣行農法」と呼ぶことがそもそも変なのではという疑問が頭に浮かび始めました。農薬や肥料が普及する前は、自然とともに育てるこの自然農法が特殊でなく、当たり前に行われていたはずなのに、自然の流れにそぐわない育て方をしている農法が「慣行」のものとみなされている。今を生きる私たちに必要なことは、もっとフラットに自然に対して向き合い、既存の概念を見直すことで自分もまた自然の一部であるという気づきを得て、全てのものにとってバランスの取れた暮らしをしていくことなのかもしれません。

 「自然界での植物の成長は種が成長し、実を結び、それが枯れ、また新しい命が身を結ぶ。全ての事象が複雑に絡み合いながらも円を描くようにバランスよく循環している」。

 常に自然と対話しながら野菜を育てている田村さんのこの一言がとても印象的でした。江戸時代以前は、土壁の家や茅葺の屋根など、私たち人間も生活の中に自然を取り入れることで不格好ながらにも"輪っか"を作って、自然と調和しながらバランスをとり生きていましたが、今はこの調和から外れた生き方をしているから無理が生じている、と田村さんは話します。

 たむそん自然農園の野菜作りでは、雑草が生えても、虫が来ても排除しようとせず、いかに全てのバランスを保ちながら、どのようにうまく付き合っていくかを考えて野菜を育てます。負荷がかからない状態で育てられた野菜はのびのびと成長し、その野菜本来の味になります。取材後に味見させていただいたきゅうりは、切った瞬間から水分が出てくるメロンのように甘くみずみずしいきゅうりでした。

ラッシュの原材料のサプライヤー、神奈川県愛川町にあるたむそん自然農園から新鮮や野菜をキッチンに届けてもらっています
ラッシュの原材料のサプライヤー、神奈川県愛川町にあるたむそん自然農園の田村吾郎さん

 そんな農業をしている田村さんがこれから向かって行きたい生き方とはどのようなものなのでしょうか。

 「自然とともに無理のない暮らしをしていきたいです。洗剤を使わないとか、虫を殺さないとか。ありのままを受け入れた暮らしができたら私は幸せです。」

 優しく柔らかな雰囲気で話をしてくれた田村さん。野菜作りについて語る眼差しは少年のように光り輝き、まっすぐと前を見据えていました。

 

ラッシュの商品を5感でお楽しみいただけるLush Fresh Liveが7月21日(土)、たむそん自然農園で開催されます。詳細、参加お申し込みはこちらのページをご覧ください。

 

<オオヤマタカコ>
Lifestyle Regenerative Designを主軸に、食、ライティング、イベント企画を通して社会変容を提案する活動家。米ボストンサフォーク大に入学後、中南米でのゲリラ農村留学やウガンダの人道支援&平和構築に従事、卒業。ニューヨークにて新聞社、EdTechでの海外戦略、編集&ライティング業を経て、2014年に帰国。東新宿にある「みせるま」で平和をテーマにヴィーガン普及やコミュニティづくりに勢力を注ぐ。100BANCH入居プロジェクトとしてフードウェイストを考える各種企画やワークショップを企業や団体とともに実施、また渋谷の朝のコミュニティを創出するCreativeShibuyaMorningsを主催するほか、最近では拡張家族を創造するCiftのメンバーとして、食を通した家族関係の再構築を行なっている。

 

2018/7/9

 

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