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LGBTが注目される今だから考えたい、誰にとっても暮らしやすい社会に必要なこと

「性」と「生」の多様性を祝福する日本最大級のLGBTイベント「東京レインボープライド」が今年も始まります。

東京レインボープライドの主催者であり、「らしく、たのしく、ほこらしく」をモットーに、性的指向や性自認にかかわらず、すべての人がより自分らしく誇りを持って、前向きに楽しく生きていくことができる社会を目指す「特定非営利活動法人 東京レインボープライド」の共同代表、オープンリー・ゲイでライター・編集者の山縣真矢さんと、飲食店経営しながら渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員も務めるトランスジェンダーの杉山文野さんは、LGBTが注目される昨今の社会の動きをどう見ているのでしょうか。誰もが何かしらのマイノリティになり得るからこそ、日本社会で生きづらさを感じている人々が共に動き始めた今、どれだけルールを変えられるかが重要だと二人は声を揃えます。

 

最近、メディアでもLGBTのテーマが多く取り上げられ、LGBTという言葉が市民権を得たのではないかと感じることがあります。

杉山:2015年に渋谷区や世田谷区で同性パートナーシップ制度が始まり、全国各地の自治体の動きが今年も続いていますよね。この1年だけでも札幌市、福岡市で同様の証明制度が始まり、千葉市では今後の導入が発表されました。東京都では2020年のオリンピックを前に、性的指向などによる差別を禁止しているオリンピック憲章に沿って、あらゆる差別をなくすためにLGBTを担当する部署の立ち上げ、差別禁止の条例を制定するという話も出ています。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が策定した「持続可能に配慮した調達コード」や、経団連の提言内でもLGBTへの理解促進や差別禁止が触れられました。こういった大きな動きが、色々な場所で起こっています。前回の衆議院選挙でも、公約にLGBTに関することが入っていた党も多くありました。

 

2012年には4000、5000人だった「東京レインボープライド」の来場者数が、去年は2日間で11万人弱にも増え、今年の東京レインボープライドの来場者数はそれを越えると言われています。参加企業・団体数は過去最多の213。これは、ムーブメントが起きているのでしょうか?

杉山:プライドウィークやパレードの参加動員数の増加には、当事者だけでなく、家族や友達、子連れで参加してくれる人、アライの人たちの参加が増えているということがあります。これは、すごく大きな変化だと思います。

山縣:今、LGBTの話題が盛り上がっていますが、実は僕の上の世代の頃からLGBTの権利に関する活動はずっとありました。その数は少なかったかもしれませんが、1970年代から「ゲイリブ(ゲイ解放運動)」が公に出てきて、1990年代には「府中青年の家事件(※)」もあり、今ほどではないですがちょっとした“ゲイブーム”と言われていた時期もありました。それから、LGBTの中でいうと心と体の性が一致しない“T”のトランスジェンダーに関しては、2003年に性別の変更を認める「性同一性障害特例法」が成立しました。それ以外にも、「人権擁護法案」が提出されるなど、これまでにも動きはありましたが、今みたいな“コミュニティ感”がある形で色々な動きがつながっている状況は、これまでの日本のLGBT、セクシュアルマイノリティの運動の中ではなかったことだと思います。

※1990年、「動くゲイとレズビアンの会」が東京都の公共宿泊施利用中に、他の利用者から差別的待遇を受け、 そのことを施設に抗議したところ施設の利用を断られ、東京都を相手に裁判を起こしたという事件。1997年、東京高裁により原告の全面勝訴の判決が確定。

 

どうしてここまで日本国内でLGBTに関する動きが大きくなったのでしょうか?

山縣:色々な素地はあったと思いますが、これまで地道にやってきた活動がベースにあると思います。東京のレインボーパレードに関していえば、途中、何度か中断もありましたが、1994年から今日まで、続いてきて、今のこの盛り上がりの種は蒔かれていたんですよね。その過程で、様々な組織や団体が設立され、クラブイベントやゲイ雑誌もこの動きを一緒に盛り上げていました。そうした時代を経て、2000年代からは日本国内の外資系企業がパレードに協賛・参加をしてくれ始め、最近は日本企業の参加もぐっと増えました。色々な動きや活動が醸成されてきた中で、やっぱり2015年の渋谷区と世田谷区の同性パートナーシップ制度の発表によって、LGBTの話題が社会に広がりました。法的な効力があるわけではありませんが、この制度についてはメディアでもたくさん取り上げられました。同性カップルが公に認められたということが絶大なインパクトだったと思います。

 

その中での東京レインボープライドという団体の役割とは?

杉山:東京レインボープライドは、LGBTのことだけを社会に理解してもらおうという活動ではなく、活動を通してすべての人が暮らしやすい社会の実現を目指しています。また、LGBTと言っても様々な方がいて、多様性の中にある更なる多様性も大事にしたいと思っています。ですので、東京レインボープライドが「こういう方向で行くぞ」とみんなを引っ張っていくというより、すでに種が巻かれてきた様々な活動がさらに前に進んでいくために、年に一度みなさんに声をかけて場所を作るプラットフォームの役割を担っていると思っています。もちろん「我らに人権を」と拳を掲げることも大事なことですが、これは流行り廃りではない普遍的なテーマなんです。

言葉選びが良いか分かりませんが、これは「代理戦争」なのかもしれないと思うことがあります。というのは、LGBTって今でこそ分かりやすい多様性の象徴的な言葉として使われがちですが、みんなが何かしらのマイノリティになり得るんじゃないかと思います。そうした時に、自分がLGBTの当事者じゃなくても、LGBTが暮らしやすい社会は、みんなにとっても暮らしやすい社会になっていくのでは、という期待があるのかもしれません。自分のマイノリティ性について一人では口に出せないけど、LGBTの動きが進んでいけば、自分にとっても暮らしやすい社会になっていくと思える。すでに多様化している今の日本社会で何かしらの生き辛さを感じている人たちが一緒に動いて形になって、一つの大きなコミュニティになっていると感じることがあります。点と点が線になり、面になってきた感じです。

 

この動きがある中で、これから日本社会で必要な動きは何だと思いますか?

山縣:民間の企業は、行政に比べて、こういった動きには敏感だと思います。社会が動けば、すぐに動いてくれる。そういった意味では、今後のLGBTに関する課題は、制度、法律という話になっていくと思います。

杉山:2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでダイバーシティという言葉が世の中に溢れることは想像しやすいのですが、それが終わった後に「なんか盛り上がってたけど、あれ何なんだっけ」となっては元も子もない。だからこそ、LGBTが注目されている今、どれだけルールを変えられるかが大事です。法律が変われば、これが流行り廃りではなくなります。どんな時代の、どんな世代の、どんな地域の人たちにも平等な権利があるということになります。

山縣:渋谷区や世田谷区をはじめとする行政の動きがあったことのインパクトは、登録パートナー数が何組とかいうことではなく、今まで社会に存在しないとされていた人たちが「そこにいるんだ」という前提になったことです。その前提条件が変わったことがすごく大きなことだったと思います。これが限られた自治体だけではなく、国全体として存在を認めるという前提条件が揃えば、変わってくると思います。LGBTの盛り上がりがある今だからこそ、少なくともそこまでアプローチしたいと思っています。

 

そこで、ネックとなることは?

山縣:やっぱり政治です。3年前、超党派の「LGBT(性的少数者)の課題を考える議員連盟」が発足されました。僕は、これは超党派でやっていくべき課題だと思いますし、超党派でやってもらいたい。今の与党の中でも異なる考えを持った議員の方がいて、特に同性婚に関しては、いわゆる「伝統的な価値観と家族観」を重んじる政治家の方々は今の動きをよく思ってないかもしれない。日本では、夫婦別姓の法案も国会で成立しませんでした。夫婦別姓もできない状況で、同性婚が認められることはまずないでしょう。

杉山:最近アメリカのワシントンDCに行ってきました。アメリカ最大のLGBT人権団体、ヒューマン・ライツ・キャンペーンが毎年開催するグローバルサミットで、ボツワナ、ナイジェリア、ガーナ、パキスタン、クエートなど、アフリカや中東地域を含む30カ国でLGBTの権利のために活動している人たちに会いました。世界中で同じように奮闘している仲間に会えた嬉しさと、特にアフリカや中東では同性愛者であることが違法で、危険と隣り合わせで活動している現実があることにも触れました。みなさん口を揃えていたのは「どれだけアライを巻き込めるか」。突き詰めると、これはLGBTの課題なのか、LGBTを差別している側の課題なのかということかもしれません。LGBTであることが課題であるかのように言われることもありますけど、そうではなくて、LGBTを差別している人たちの課題なんだということです。そういう言い方すると角が立つかもしれませんが、誰しもが何かしらのマイノリティだと思うんです。セクシュアリティっていう切り口で切り取れば僕はマイノリティですが、他のことで見ればマジョリティであることもあります。マイノリティの課題に向き合うことはマジョリティの課題に向き合うことだと思います。

 

今年の東京レインボープライドのテーマ「LOVE & EQUALITY」。

山縣:一口に“LGBT”と言っても、多種多様な課題やテーマがあります。そこから今、日本国内では具体的に何をどうしていけば いいのかということを考えました。そこでシンプルに書いたのが「マイナスをゼロに」「同じことを、同じように」。要は、今のLGBTを取り巻く状況は不平等なんです。異性間では結婚できるけど、同性間では結婚はできない。それ以外にも、税制など機会の不平等もあります。色んな愛の形が存在しているのに偏見や差別がまだあることも事実です。そういう想いも込めて、今年の東京レインボープライドのテーマを「LOVE & EQUALITY」にしました。

杉山:政治的な思想は違えども、年に一回くらいは集まって、社会に対して「自分たちはここにいる」と社会の中に存在していることを伝えていきたい。そうしないと、僕たちは結局いない人になってしまいます。そういう意味では、色んなバックグラウンドを持った人に集まってもらう場を作りたいです。なぜかといえば、誰よりも自分自身が人の出会いによって今の自分であると思っているからです。レインボーウィークの総動員数10万人は、「1+1」の繰り返しなんです。目の前の「1+1」をずっとやり続けてきた今までの経緯があって、それが今掛け算になるタイミングなのかなと思います。ゼロにゼロをかけても1ができないように、「1+1」ができないと動きは大きくならないと思います。だから、僕は日々「1+1」をやっています。

 

最後に、「東京レインボープライド2018」のスタートに向けて、お二人の意気込みを聞かせてください。

山縣:とにかく、けが人が出ることなく、大きなトラブルなく無事に終わること(笑)。そのために、スタッフが一生懸命準備をしてくれています。当日になったら自分も一当事者として、楽しみたいと思います。パレードでは先頭を歩くと思いますが、自分らしく、楽しく歩ければと思います。後は、「LOVE & EQUALITY」について、参加するみんなに考えてもらいたいなと思います。

杉山:とにかく、みんなに楽しんでもらいたいです。そのために、1年かけて準備してきました。今まで参加したことがない人にも参加して欲しいなと思います。まだ僕たちのメッセージが届いていない人にこそメッセージを届けたい。なので、参加予定のみなさんは「あんまり興味なさそうだな」という人を巻き込んで参加してください!

山縣:あと、良いところがあったら褒めて欲しいです(笑)。毎年、要望も聞き、反省もしながら、より良いものを作るために改善しています。日本人って褒めることが苦手だったりしますけど、良かったことも悪かったことも、僕たちに声を届けて欲しいですね。その積み重ねで、この先の東京レインボープライドという場所、そして日本社会をもっと良いものにしていけると思うので。

 

<特定非営利活動法人 東京レインボープライド>
らしく、たのしく、ほこらしく」をモットーに、性的指向および性自認(SOGI=Sexual Orientation, Gender Identity)のいかんにかかわらず、すべての人が、より自分らしく誇りをもって、前向きに楽しく生きていくことができる社会の実現をめざしています。
https://tokyorainbowpride.com/
 

誰もが自分らしく暮らせる社会を目指して。
#WeBelieveinLove

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LGBTとは、レズビアン(同性を好きになる女性)、ゲイ(同性を好きになる男性)、バイセクシャル(異性を好きになることも同性を好きになることもある人)、トランスジェンダー(出生時に割り当てられた性別とは一致しないアイデンティティを自認する人)の頭文字をとった言葉で、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称の一つ。日本労働組合総連合会が2016年、日本全国の20歳~59歳の1,000名にインターネットで実施した「LGBTに関する職場の意識調査」によると、自身がLGBT当事者であるという回答は8%を占めた。

 

2018/4

特定非営利活動法人東京レインボープライド共同代表の山縣真矢さんと杉山文野さん。東京レインボープライド2018のスタートを前に、LGBTが注目される今だからこそ考えたい、誰にとっても暮らしやすい社会に必要なことは何か、お話を伺いました。
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