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プラスチック汚染問題がリサイクルだけでは解決されない理由

プラスチックは、(歓迎されないながらも)地球に住み着きはじめています。研究者や活動家は、今後"奇跡の材料"とも呼ばれるこのプラスチックの使用をクローズドループに限定し、"消耗品"としてのプラスチックを過去のものにすべきだと声を上げています。

 

【プラスチックの島】

最近、世界中のヘッドラインを賑わせている、英領ヘンダーソン島。オーストラリアと南米大陸の間、南太平洋に浮かぶ、人間の生活から遠く離れたこの無人島は、ユネスコ世界自然遺産に登録されているにも関わらず、世界一ゴミの密度が高い島という理由で世界中に知られています。

ヘンダーソン島に一番近い有人島は、115km離れた人口わずか40人のピトケアン諸島。工業施設や居住地を探すには、さらにそこから5,000kmも移動する必要があります。ヘンダーソン島のビーチに人間の足跡はありませんが、海から流れ着いた17.6トンものゴミが生活の形跡を残しています。

2015年に、オーストラリアのタスマニア大学と野鳥保護団体のRSPBが共同で行った調査によると、約3,800万個ものプラスチック破片がヘンダーソン島の砂浜で見つかり、そのうちの68%が砂浜の下に埋もれていました。これは驚くような数字ですが、調査で10cm以上砂浜を掘らなかった点や、マイクロ・ナノプラスチックといわれる小さな物質を含まなかったことからも、研究者たちはこの数字は過小評価したものであると判断をしています。

ヘンダーソン島で見つかるゴミのほとんどは、南太平洋と呼ばれる海流から流れ着いています。この海流は、風の方向によって海流が渦状になり、地球の回転や陸塊によって海のゴミが集まり、ひとつの"海に浮かぶゴミの島"ができあがります。研究者は、ヘンダーソンをはじめ、こうしたゴミの島が世界のゴミ箱になってしまっていると話します。

ヘンダーソンの北側にある砂浜には、毎日3,000から13,000ものゴミの破片が流れ着いています。バイクのペダルや釣り糸、バケツなどが砂浜に流れ着き、恐ろしい光景をつくりあげています。他にも、貨物船から出たと思われる数メートルにも及ぶロープが分解され、緑色の染料が砂を染めている光景も広がっています。このロープは大きすぎるため、調査の対象からはずれ、調査結果には含まれていません。

また、何百もの紫色のヤドカリは、自然の中での本来の姿とは程遠く、プラスチックゴミで埋め尽くされた砂浜で見つけたプラスチック容器やボトルを住処にしています。ヘンダーソンはこの島のエリアで唯一、アオウミガメの巣作りに最適な場所であるにも関わらず、浜辺の一面に広がる大量のゴミが原因で、メスの産卵を邪魔し、釣り糸に絡まる事故も後が絶えません。

調査のトップを務める、ジェニファー・ラバーズは、浜辺のほとんどが砂ではなく、プラスチックで出来ていると話します。人間の住む場所から程遠い島で、これほどのゴミがあることについてジェニファーは「一見、孤立したはるか遠い海の場所に見えても、このようにゴミが流れ着くことによって、いかに海と私たちの生活が繋がっているのかよく分かるはずです。」と語ります。

ラッシュ
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ジェニファーは、この壮大なスケールのプラスチック汚染問題を世界中に知ってもらいたいと、ヘンダーソン島の名を広め、声を上げてきました。ヘンダーソン島のゴミをすべて片付けるのは現実的ではなく、かつ問題の表面的な解決にしかならないと彼女は考えています。今あるゴミを片付けることができたとしても、島に流れ着くゴミは途絶えることなく、片付けた分もすぐに別のゴミで入れ替わるだろうと話します。研究者は、このプラスチック問題を根本から解決するためには、プラスチックそのもののあり方について、一人ひとりが考えていくことが重要だとしています。

「私たちに必要なのは、一度立ち止まって、今までの自分たちの行動を振り返ることです。そうすれば、遠く離れた南国の島を、一度二度片付けることが解決に結びつかないことが絶対に分かるはずです。私たちは、それがどんなに大変な作業であったとしても、街の暮らしの中でプラスチックに依存することを止めなければいけないのです。」

 

【楽園の崩壊】

ツバルはかつて、南太平洋の楽園として知られる美しい島国でした。しかし、1978年に国が独立して以降、ツバルには多くの輸入品が集まってきたことにより、膨大な量のゴミが島に残され、住み着くようになってしまいました。

ゴミを処理するインフラも整わないままゴミが増えたことにより、この島の総面積のうち8%を占める土取場は、ゴミ置き場になる運命を辿りました。この土取場は、もともと第二次世界大戦の際、同盟国軍用の滑走路となるためにサンゴを掘り出して作ったものでしたが、島で急速に増えていく人口を補うために、ゴミの上に家が建てられていきました。

ドキュメンタリー映画「プラスチック・オーシャン」の製作チームがツバルに行った際、このゴミ置き場が人間の生活にどのような影響を与えてるのかを目の当たりにしました。そこで彼らは、生まれてからの25年間、生涯このゴミ置き場に住み続けているというマラオ・アピサイに出会い、この問題が原因で病気に苦しめられる住民や妊娠ができなくなった住民もいる現状を彼女から聞くことができました。彼らは、この大量のゴミとともに、家畜を育て、危険なガスを出すゴミを燃やす中で日常生活を送っています。

太平洋の開発援助計画の中で、ニュージーランド政府は、ゴミ置き場を本来の環境に戻すことで、人が住める状態にし、コミュニティの公衆衛生問題を改善することを目指すツバルの再生プロジェクト(Tuvalu Borrow Pit Reclamation Project)を発足しました。そして、25万㎥以上もの砂が、近くのラグーンから浚渫され、置き場に埋められ、置き場にすでに埋まっていたゴミは、島の北側にある大きな埋め立て場に移動され、2016年4月にすべての作業が終了しました。

このプロジェクトチームを率いるカリブレ・コンサルティング社によると、このプロジェクトによりポジティブな効果はすでに現れ始めているといいます。ゴミで埋もれていた土地が現れ、家畜と人間の生活の境界線ができ、夕方や週末にはバレーボールを楽しむ姿が多くなるなど、娯楽も楽しめるようになりました。ツバルのフナフティ・ファレカウプレ(部族長会議)のアンドリュー・イオタナは、このプロジェクトを導いてくれた人々に手紙を宛てました。

「このプロジェクトはコミュニティーにとって一生の宝となります。われわれを支援してくれたことは、言葉では言い表せないほどの感謝でいっぱいです。」

ツバルは、以前の楽園としての姿に戻れたかもしれません。しかし、これからこの島に流れ着くゴミの行く末はどこにあるのかについては、未だ疑問が残ります。ツバルは、リサイクルできるゴミを輸出するには難しい場所に位置し、ゴミを島に置くスペースもほんのわずかしかないのです。

プロジェクトのディレクターを務めるピーター・オリビエは、このプロジェクトがゴミ問題解決のためではなく、住民の健康問題と生活基準を向上し、それまでほとんど存在しなかった土地を増やし、コミュニティを豊かにするために実行されたと話します。ツバルに広がるゴミ問題は、決して彼らだけが抱えている問題ではありません。海洋汚染の意識改革に取り組む団体であるPlastic Oceans Foundation(プラスチック・オーシャンズ・ファウンデーション)とブルネル大学が発表した最新のレポートによると、世界の貧困層の人々が暮らす場所にある80-90%ものゴミが回収されず、かつ安全に捨てられていません。

 

【原点へ還る】

島々を汚染していくゴミ問題の原因の一つは、リニア・エコノミー(直線型経済)にあると言われています。リニアエコノミーでは、プラスチックが製造され、消費者がそれを使用し、使い捨てるという流れがあります。このような形でなくても、プラスチックは地球と平和に、持続可能な形で共存できる方法があるのではないでしょうか。サーキュラー・エコノミー(循環型経済)という経済モデルの中では、プラスチックは最後まで使い切ることでゴミの削減に貢献することができます。プラスチックを修復し、リサイクルし、別の価値ある形にすることは、プラスチックの命を循環型で延ばしていくのに鍵となる要素です。

ラップ(Wrap)と呼ばれる、地球環境に配慮した資源の活用法をリサーチしている団体が調査した最新の報告書によると、イギリスすでにこのサーキュラー・エコノミーを実現するために、重要な動きが始まっているといいます。イギリスでは現在、プラスチックボトルのリサイクル率は上がっており、ミックスペーパーの回収量も増え、製造業者は軽量のプラスチックに切り替えています。しかしこれだけでは問題解決には至らず、リサイクルに適さない素材はまだ沢山残っているといいます。リサイクル箱へと辿り着くことができるプラスチックの命は短く、2-3回リサイクルされたプラスチックの強度や質は下がってしまい、それ以上何にも使えないものとなってしまうのが現状です。

 

【国境のないプラスチック】

海は毎年、8万メートルトンものプラスチックで汚染されています。その80%もの量が、私たちが住む陸上から流れてきています。プラスチック・オーシャンズ・ファウンデーションとブルネル大学の共同調査によると、海洋汚染の原因を多く作っている4カ国が、中国、インドネシア、フィリピン、ベトナムです。これらの国では、廃棄物を処理するインフラが整っていないために、ほとんどのゴミが海に流れ着く運命にあるといいます。

実は、ゴミには大きなビジネスチャンスをがあります。2015年、イギリスでは、79.1万トンものリサイクルされたプラスチックが中国へと輸出されました。中国では、このプラスチックを加工し、素材としてまた売り出すことがビジネスとなり、その後アジアの海には大量のゴミが流れ着いています。しかしこれはイギリス、ヨーロッパもしくはアジアで最初に捨てられたゴミの可能性もあり、地球に住む誰もが問題の原因になっている可能性があります。

中国では2012年、オペレーション・グリーン・フェンスというプロジェクトが発足されました。これはリサイクルできないゴミ問題に向けた戦略、かつ輸入されるゴミに規制をかけるというものであり、この規制が行われることで、世界各国が自国で出す廃棄物について考える機会となり得ると研究者たちは考えています。

2015年、欧州委員会が採択した"サーキュラー・エコノミー・パッケージ"は、2025年までにプラスチックパッケージによるゴミの55%をリユース、またはリサイクルするという目標を掲げましたが、こうした対策、そしてプラスチックパッケージをリサイクルするだけで本当に問題解決になるのかを私たちは考えなければいけません。

ヘンダーソン島の調査研究を代表する、ジェニファー・ラバーズは私たち消費者にメッセージがあるといいます。

「政府が問題解決に向けた法案を作ると期待して、何もせず、ただ待つだけということはしないでほしい。隣人がリサイクルしてくれたらいいなという期待で何もせず、ただ待つこともしないでほしい。私たちは、待ってばかりいないで、外に出て、問題解決に向けて実行するべきです。周りのお手本となるような行動をとることが大切です。自分へのチャレンジだと思って行動をして、家族ひとりひとりと協力してプラスチックの代用品を積極的に取り入れましょう。」

各国の政府はプラスチック問題を解決するために、それぞれが少しずつ対策を講じているかもしれませんが、私たちのプラスチックとの関係を見直すことは、現在のカルチャーを変えていかなれば効果は生まれず、従来のプラスチックの使い方、捨て方は今後、一人ひとりが意識を変えることで、問題解決を現実にすることにつながっていくはずです

Photography of Henderson Island courtesy of Jennifer Lavers.

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