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Vegan Life #4: ヴィーガン × 映像クリエイティブ活動家

11月1日は世界ヴィーガンデー。本連載は、NPO法人ベジプロジェクトジャパン代表の川野陽子氏がヴィーガンをライフスタイルの中に取り入れながら生きられている方にお話を伺い、人生の中に加わる深みや面白さを探っていくシリーズ企画の最終回です。

【Vegan Life連載 全4回はこちら】
Vegan Life #1: ヴィーガン × クイアスペース
Vegan Life #2: ヴィーガン × ライフスタイルクリエイター 
Vegan Life #3: ヴィーガン × 写真家
Vegan Life #4: ヴィーガン × 映像クリエイティブ

 連載4回目でこの企画の最後を飾るのは、ロサンゼルス在住の映像クリエイター、リュウジ・チュアさん。英才教育を受けた彼が選んだ道は、動物のための発信者です。映像制作のスキルと大学で研究した教育の要素を使い、発信を続ける若い活動家は何を思い行動に出るのか、リュウジさんのVegan Lifeをお届けします。

 リュウジさんと私が初めて会ったのは2年前でした。シンガポール人の父親と日本人の母親をもち、フランスで生まれ育った彼がアメリカの大学に在籍しながら、8ヶ月の間短期留学で日本に来ていた時に今はない新宿のインド料理屋さんでのベジプロジェクトのミーティングに参加してくれたのが彼との出会いでした。自身の考えをはっきりと表現し、日本語・フランス語・英語を流暢に使い分ける何だか頭の切れる人という第一印象を彼に対してもちました。あれから2年、彼は大学卒業後もアメリカを拠点としながら、映像を作りヴィーガニズムのための発信を続けています。活動家ともいえる彼のヴィーガニズムに対する考え方や働きかけについて詳しく話を聞いてみたいと思い、インタビューを依頼したところ私たちや家族に会うために東京に帰って来てくれました。

映像制作風景 ニューヨークシティにて

 

―語学に堪能で物応じせず、発信力も着々とつけているリュウジさんですが、どのような子ども時代を過ごしていたのか気になります。

 父がシンガポール人で母は日本人ですが、パリで生まれ育って高校まではインターナショナルスクールに通い、授業は英語とフランス語で受けていました。途中からは中国語も習い会話はできます。両親は僕を音楽家にしたかったみたいだから、若いころは音楽をまじめにしていました。3歳からピアノを習い始め、7歳から16歳まではピアノの専門学校にも通いました。毎日一生懸命にピアノを練習していましたよ。でも12歳の頃から写真やドキュメンタリー映像制作の仕事に興味を持ち、写真やビデオを撮ることを始め、映像制作を極めたいと思いアメリカの大学に通うことにしました。両親は音楽の道を進まないことを決めた僕にショックだったみたいだけど。

 大学2年生になる頃にヴィーガンになることを決めてから、人生が色々と変わりました。自分が今するべきことや学びたいことは何なのかと真剣に考えて、教育学部に移ることにしました。それまでに習得した映画制作の技術は今の活動にとても活きているけど、最初にいた学部はハリウッドに入るための学部だったので移籍することが必要だったと思います。

 

―大学の教育学部では、どんなことを探求して何を学んだのでしょうか。

 人はどう変わるのか、世界はどう動くのかを知りたいと思いました。どうすれば人の価値観を変えることができるのか、世界を変えるには教育で何ができるのかを追求しました。

 論文としては、特に教育におけるSNSの影響力について書きました。SNSと教育についての既存の論文のほとんどが「SNSは教育によくない」という趣旨でしたが、僕はSNSの力に期待していたからそういう論点をまとめました。そのために既存の論文もたくさん読んだし、動物やヴィーガニズムに関わらず、SNSで啓発をしている人の話を取材したりSNSで教育を勧める企業でインターンシップをしたりしました。SNSで自己啓発や人との接し方に関して何万人もの人に影響を与えてきた人とも一緒に働きました。結論としては、SNSはもちろん良くない部分もあるけど、人を動かすポテンシャルがあるということを書きましたね。

 

―大学の学部を変えるほど人生に影響したヴィーガンという生き方ですが、なぜヴィーガンというライフスタイルを始めたのですか。

 『Sapiens: A Brief History Of Humankind (邦題:サピエンス全史文明の構造と人類の幸福)』という本を読んだことがターニングポイントでした。この本は、人類に関連する歴史の本ですが、単体の出来事というより、大きなムーブメントやイデオロギーの流れを紹介している本です。この真ん中の辺りに奴隷貿易のことが書かれていました。奴隷を使っていた人たちのことを僕たちは簡単に悪者と思いますよね。でも資本主義の中では利益が優先されて倫理的でないことも起きます。奴隷を使っていた人や奴隷によって作られた製品を使っていた人たちは悪い人ではなくて、資本主義社会のシステムの中で生活していた人たちでした。奴隷が作った製品というのは、たとえばクッキーの中の砂糖とか。当時も特に何も考えずにクッキーを買う人がほとんどだったと思います。

 奴隷貿易のことが書かれていた200ページほど後に「工場畜産」について書いてありました。現代の主流な家畜生産の方法ですが、驚くようなことがたくさん記載されていました。たとえば鶏卵用のヒヨコが生まれる場所の写真も載っていました。つまりオスのヒヨコが生まれてすぐに殺されている場所です。どうしてかというと鶏卵用のニワトリとしてはメスだけが必要だからオスは処分されます。これを見たときに、間違っていると思いました。

 本には、「資本主義以前は、人類はたとえば戦争で人を殺すことは悪いことと理解しながら悪いことを起こしていた。でも、資本主義の中では無関心でいることで悪いことが起こっている」ということが書かれていました。僕は奴隷制度がおかしいと思うから、タイムマシンで300年前に行ったとしても奴隷によってできた製品を買いません。これと同じで、動物に対する今の行為が間違っていると思うから動物由来の物を買いたくないと思い、動物からできているものを買わないことを決めました。実はその時、ヴィーガンという言葉を知りませんでした。ベジタリアンやヴィーガンについてはその後たくさん調べましたよ。

 

―社会システムの中にリュウジさんもいて、リュウジさん自身も無意識に自分の望まないことをしていたことに気が付いたんですね。

 僕はもともと動物が大好きでした。父の実家にいた犬のことも可愛がったし、子どもの頃は動物が好きだから動物を撮る写真家にも憧れていました。動物の写真家を真似て、動物園で檻を入れないようにして動物が野生のように見える写真を撮ってみたこともありました。その時は動物が好きだからそんなことをしたのですが、今思うとおかしなことだと思います。当時は動物を個々の存在として認識していなかったことを今は分かります。それにね、動物園から家に帰る途中にフライドチキンを食べたんです。動物をそれぞれの命のある存在として考えていなかったから、ついさっき見た動物たちと同じ生き物を食べることが出来たんだと思います。その動物に会ったら好きになるのにね。

 子どもの頃に釣りをしたことがありましたが餌になる虫を針に刺すときも、魚を棒に刺して生きたまま焼かれるのを見たときも、何となく嫌な思いをしたことを覚えています。それでもその魚たちを食べたし、シンガポールの家ではたくさんの動物を飼っていて鳥も小さい鳥かごに入っていました。そういう記憶を思い出して、やっぱり自分はその時悲しかったんだって、ヴィーガンになって気が付きました。本当の自分は動物が好きで彼らが痛い目にあったり窮屈な思いをしたりしてほしくないと思うのに、その本当の自分に気が付いていなかったんです。

 

―実際にインスタグラムで発信することを通して手ごたえや葛藤はありますか。

 色んな人から1日に100件から200件のメッセージやコメントを頂きます。たとえば、「自分も活動を始めた」とか「ヴィーガンになった」とか。それからヴィーガンではない人に対して前は感情的に話していた人が、僕の映像を見て話し方を変えたという人も100人くらいいます。正直、インスタグラムでの発信を始めたころは実際にどれほどの、どの様な変化を自分が作れるか分からなかったけど、今はよくわかります。今の形で動画の発信を始めたのは今年の7月末で、3ヶ月間で1万人以上がフォローしてくれています。中学生や高校生でヴィーガンだと学校で馬鹿にされたり家族に理解されにくくて悩んでいたりする人も多いです。そういう人たちへの励ましにもなっていることをメッセージで知ると嬉しいです。もちろん、ネガティブなことを言ってくる人はいるけど、気にしません。

 

―発信する際に大事にしていることは何かありますか。

 ポジティブな発信をすることですね。否定的な活動をしたり言ったりはしません。たとえば僕との会話でヴィーガンでない人が何かに気が付く瞬間を見せる動画を発信することがあります。この動画で、変化は起こせるんだよ、という希望を見せているつもりです。よく、人は変わらないとか世界は変わらないとか聞きますが、そういうことは簡単に言えますよね。でもそれに対して、人は変わるって僕は示しています。

 それから、何かを伝えるときは事実に基づくことだけを伝えるようにしています。ヴィーガニズムは平和的な考えなので、暴力的な活動はヴィーガンのイデオロギーと矛盾していると考えています。それに、人に対して怒ったとしたら自分の心にも良くないですしね。マハトマ・ガンディーやマーティン・ルーサー・キング・ジュニアのように本当に世界を変えた人たちはみんな、愛を使って世界を変えましたよね。僕の場合はこうやって世界を変えるよって伝えています。これを見た他の人も試してみてくれると嬉しいですね。

―そんなリュウジさんはヴィーガンとしてどんな社会を望みますか。

 平和な社会。人間の間だけじゃなくて、他の動物たちにとっても。人間も動物ということを忘れずにね。僕は動物のことを大事に思うから活動を続けますが、動物たちの搾取を止めたいという気持ちを超えて今は平和を作りたいという思いでいます。人間も動物も自由に生きられるようになると良いですよね。

 

―ご自身の夢やこれからの展望を教えてください。

 インスタグラムでの発信が今のメインの活動ですが、これからもSNSでいろんなことをしたいと思っています。スポンサーも付けながら映像制作のスキルも活かして、動物たちの権利のためヴィーガニズムのために、歴史的って言えるほど大きなキャンペーンをしたいと構想中です。また、日本にも活動を広げたいなと思っています。アメリカでできることはいずれ日本でもできることだと思っています。できる可能性のあることは何だってやってみる方が良いですよね。

 よりたくさんの人に今動物たちに起こっていることや、そのために力を注いでいる人たちがいることを知ってもらうことを通して変化を作っていきます。SNSにはそういう力があるから、上手く活用しながらね。

<取材後記>
 社会システムの中で意図せず本来の自分なら望まないことをしてしまっているということは、動物への扱いだけではなくフードロスや環境汚染やハラスメントなど多様なことに当てはまるように思いました。リュウジさんが気付いて自身を変え、今世界を変えようとしているように、一人ひとりの考えや行動で変化を作ることができるのだと思います。

 リュウジさんは英語で話すとスピードが速く迫力もあるのでスローペースな私はたじろいでしまうのですが(笑)、同じ趣旨を日本語で話してくれるとリュウジさんの生き方は優しさでできていることがよく分かります。愛で世界を変えられると本気で思っているリュウジさんに、このインタビューを通して心を揺さぶられる瞬間が何度もありました。人も人以外の動物も平和に暮らせる世の中を、みんなで作っていけますように。

 今回の連載を担当し、とても楽しめました。それは取材させて頂いた5名の方々が、それぞれの人生の中で「本当に大切なもの」に向き合い考えを巡らしてこられたからだと思います。「ヴィーガンでいるのはどうして?」という質問に対して、動物のため、地球のため、健康のためと模範解答のように一言で答えられてしまうことがあります。本当はそれぞれの人にとってストーリーがあるのに、掘り下げる機会があまりありません。また、ヴィーガンやベジタリアンではない人と話すときはパーソナルなことよりも動物性食品の生産による地球への負荷だったり動物の扱われ方だったり健康のことだったり、情報を伝えるだけで話すには十分になってしまいます。

 しかし今回は、一人ひとりのバックグラウンドやヴィーガンでいることの捉え方、ヴィーガンという要素の入った今の生き方を、じっくりと聞かせて頂くことができました。みなさんに共通してあるのは、人や他の動物への優しさと当たり前とされている物事を自身の目で見ていることでした。そして希望も。どうしようもないようにも思えてしまうことに対して、ライフスタイルを変えたり考えることを続けたりできることから始めているのは、みなさんが今よりも平和な未来を望んでいるからです。こんな素敵な人たちがちゃんといるから、それを叶えていくことができるように感じます。

 ヴィーガンという選択の基にあるもの、派生するもの、まだまだ様々なことに繋がっていきそうです。今回お話しを聞かせてくださったみなさんに改めて心から感謝しています。この連載が、「ヴィーガンの人いるよね」という状態から、あと一歩踏み込んでみる誰かのきっかけになれば、とても嬉しく思います。

川野陽子

<プロフィール:リュウジ・ チュア(Ryuji Chua)>
1996年フランス生まれ。シンガポール人の父親と日本人の母親をもつ。12歳から友達と動画を作り始め、週末は撮影と映像・音声の編集に専念。カリフォルニアのチャップマン大学ドッジスクール映画制作学部に入学し、2年時には教育学部に変更し学士号を取得。卒業後もロサンゼルスでヴィーガンや、動物の生存権に関する動画を自ら作り、主にインスタグラムで発信している。
Instagram @peacebyvegan

<撮影協力:自然野菜レストラン駒込ナーリッシュ>
東京都内の駒込・巣鴨で自然食を楽しむレストラン&カフェ。オーガニックの食材であることはもちろん、自然栽培の野菜を使ったこだわりのお料理を楽しめます。国内ではまだ珍しい全てのメニューがオリエンタルヴィーガン対応のレストランです。
Web: http://nourish.co.jp/

Photo credit: Cédric Rolando

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11/9/2018

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