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Vegan Life #3: ヴィーガン × 写真家

11月1日は世界ヴィーガンデー。本連載は、NPO法人ベジプロジェクトジャパン代表の川野陽子氏がヴィーガンをライフスタイルの中に取り入れながら生きられている方にお話を伺い、人生の中に加わる深みや面白さを探っていくシリーズ企画です。

【Vegan Life連載 全4回はこちら】
Vegan Life #1: ヴィーガン × クイアスペース
Vegan Life #2: ヴィーガン x ライフスタイルクリエイター 
Vegan Life #3: ヴィーガン x 写真家
Vegan Life #4: ヴィーガン x 映像クリエイティブ

 第3回は写真家のお二人。26年間の写真家活動の中で数々の賞を受賞し、写真集も出されている金村修さんと、今年写真界の芥川賞とも言われる木村伊兵衛写真賞を受賞された小松浩子さんのVegan Lifeをお届けします。

 友人から夜中に「とてもクールな二人に会ったよ、さらに彼らはヴィーガンだって。ハルコは会うべきだから今すぐ来て」と電話がかかり、急だなと思いながら向かった先でお会いできた方が、金村さんと小松さんご夫妻でした。お二人は写真家として偉大な業績をお持ちなのですが、その場では特にお話しされなかったのでお二人の偉業についてはその後知ることとなりました。それでも私は、お二人の写真家活動とヴィーガンでいることが何かしら繋がっていることや、世の中に対して優しくて強い思いをもたれていることに関心を持ち、改めてお話を聞いてみようと思いました。

金村修さん(左) 小松浩子さん(右)

 

―お二人はともに写真家でいらっしゃいますが、活動を始められたきっかけを教えてください。

金村:私はもともと音楽の道を進もうとしていましたが、方向転換をしたときに一人でも打ち込める写真を選びました。このまま人生終わったら悔しいし自分自身で納得したかったから写真に人生をかけようと必死でしたね。92年、東京綜合写真専門学校に通っていた学生時代にオランダ・ロッテルダム写真ビエンナーレに招聘されたことがプロとしてのスタートです。著名な写真家の中に1人だけ無名な学生だったので周りも自分も驚きましたよ。

小松:金村さんが毎日新聞社が設立した賞である土門拳賞を受賞された美術展で彼の写真に出会いました。私は彼の作風に引き込まれファンになり、彼の主催するワークショップに通い始めました。そして作品発表を始めたのが2009年です。大きな美術館での展示では写真は存在感が小さいので写真に力をもたせるためにたくさんの写真を一斉に展示する表現を金村さんが始めました。その金村さんがされた手法の影響が私にもあります。

 

―お二人がそれぞれ写真で表現されていることは何でしょうか。

金村:東京、都会の繁華街のごちゃごちゃしたところを撮っています。汚い場所といいますか人間の痕跡、生きている証があるような場所です。特に都会にはそんな痕跡がありますね。写っている街が汚いから反日思想をもっているのか、なんて外国のメディアに聞かれることもあるのですが、そんなこともないですよ(笑)。そのままを写しています。ピントの合う幅を大きくして撮っているので、写真の中の情報の密度が濃くて人の目で見られていないものも写ります。本当はあるんだけど人が見ていないものばかり撮っていますね。

 小松:私は、工場の資材置場を撮ります。写真1枚で表現するのではなくて、大量の写真を見せることで空間を構成しています。写真は時間を止められるのですが、時間の進み方は分からないですよね。建設現場の写真だと廃墟にも見えるし建設中にも見えます。写真を床にも壁にも配置して、撮っている順番を混ぜこぜにして変な時間空間を作り出しています。それぞれの写真がそっくりだから、見ている人はわけが分からなくなる錯覚を起こし、不安な感じのする空間で方向も分からなくなります。こういうおかしな空間を作るのは、「もう1つの空間、違う空間があるんじゃないか」という投げかけです。私たちが普段見ているものが本物なのか、肉眼では見られない世界があるのではないかと考えながら作っています。

 

 

―おもしろいですね。私は目で見た対象を写真に収めるのだと思っていたので、自分の目で捉えていないものが写真にあることを意識したことがありませんでした。お二人は素晴らしい賞を受賞されてきていますが、どういう思いで賞に向き合っているのでしょうか。

金村:あまり賞について執着がありません。でも賞をとって良い事は「賞なんてくだらない」っていえること(笑)。

小松:賞をいただけることは嬉しいですが、賞は対外的なことですよね。誰かに評価されなくても、誰もいいねって言ってくれなくても私は大丈夫。以前にボロボロのアパートを1年間借りて毎月新作展を開催したことがありました。その時は週に9人しか来なかったときもありましたが、別にへこまないし私は続けられます。写真はやることが決まっていて、私は必ず撮るしいっぱいたまったから発表するかっていう、私にとって自然の循環です。

 

―お二人にとって写真とは何でしょうか。

小松:大きな写真だと巨大な蛇みたいな、時には30メートルもある紙の物質だなという感じ。撮った瞬間はもうなくて、あったものを痕跡化するものです。

金村:得体の知れないもの。現実とそっくりなのに現実じゃない、もう1つの世界を映しているものですね。

 金村さんの作品

 

―なぜお二人の写真はモノクロ写真が多いのでしょうか。

小松:写真を始めた当時はモノクロのフィルムが安かったんです。私たちはたくさん撮ってたくさんプリントする方法をとっているので、まずはたくさんできるものとしてモノクロ写真でした。今では超高級品になっちゃったけど。写真を撮ることは対象である現実と関わっていないといけないので、当時の私たちにとってはモノクロ印刷が現実的でした。モノクロ印刷にこだわりがあるわけではなく、最初からの方法を続けています。

2017年『鏡と穴-彫刻と写真の界面 vol.4 小松浩子』ギャラリーαM

 

―見る方に伝えたい作品に込めている想いなどがあれば教えてください。

小松:見る人の受け取り方はどうであっても良いと思っています。大事なのは作ることなんです。

 

金村:写真って自立ができないものです。誘導しやすいものだけれど、それだけで何かを言うことができないから、伝えたいことがあるなら写真は選ばない方がいいかもしれない(笑)。でも、写真の中でアンチキャピタリズム(反資本主義)の精神は写っていると思います。例えば、フードシステムのグローバル化や資本システムの加速化で出てきた弊害。見る人によっては、街の中の豚肉の看板でブタが笑っていたりすることもおかしいって見えると思います。写っているもの、入っている情報がたくさんあるので、見る人によって見る部分が違います。自分の作品を見て理解して欲しいわけではないけれど「見ろ、これが日本だ」と、とにかく見て欲しい気持ちはあります。

 

―お二人はともにヴィーガンのライフスタイルをとられていますが、なぜなのでしょうか。

小松:ノイズミュージシャンの秋田昌美さんの著書『わたしの菜食生活』を読み、ベジタリアンやヴィーガンについて理解を深めました。その前は色んな矛盾に気が付いていたのに踏み切れない状況でした。人と一緒に食事をできなかったり、周囲の人がヴィーガンという姿勢に怒ってきたりと周りが許してくれない雰囲気もありました。でも、一緒に生活している金村さんと一緒にヴィーガンになることを考えて、もう10年ほど続けています。

金村:そうだね、1人だったらヴィーガンにはならなかったなと思います。ヴィーガンになってから、違和感を持っていたこと1つずつを見つめてきました。革ジャンとかウールとか着るものも含めて。ヴィーガンという概念は肉を食べないといけないと思いこんでいる人の解放にもなると思います。写真については見る方の感想なんていらないと思うけど、ヴィーガンというライフスタイルはみんな知ったらその方が良いよね、と思います。私は社会の仕組みに疑問をもって始めましたが、結果的に健康にも良いみたいで体調も良くなりました。

 

―お二人は、ヴィーガンとしてどんな社会を望みますか。

金村:動物から搾取するのをやめることがヴィーガンであることだと思うのですが、何かが何かを搾取することは良くないと思うな。搾取があらゆるものからなくなると良いと思います。

小松:動物も地球も人間の所有物でもないのに、私たちは自分のものにしようとしていますよね。所有することを止めたら良いのに、と思います。動物たちには彼らの生き方があるし、言葉が通じないからとか種が違うから搾取して良いという論法はおかしい。私たちが沈黙している人のために話すこと、声のない者に対して耳を傾ける気持ちを持つことができるようになると良いですよね。

 

―最後に、ご自身の夢や今後についてお話しいただけけますでしょうか。

金村:今の日本では芸術は評価されにくい。ほとんどの芸術家にとって制作をしながら生活を続けることは困難です。芸術家の地位の向上のために助言できる立場になるためにも、私自身がまずアートのマーケットがある場所たとえばニューヨークやパリ、ベルリンなどで自分自身を高めていきたいと考えています。私の場合は写真の対象が東京の街なので、東京を撮りながら作品を世界に出していきたいです。

小松:体が動く限り、写真を撮って自分でプリントすることを続けたいです。私たちはワークショップも行っているのですが、ワークショップ最終日には教室でケータリングをして参加者と一緒に食事を楽しみます。その食事はヴィーガンです。食事されるみなさんが動物を使わない食事に美味しいと驚かれ、お肉に見せているものなんてお肉と勘違いして食べている方もます。ヴィーガンというライフスタイルを知っていただく機会に少しでもなっていると思うと嬉しいです。世の中のシステムの中で立ち止まってみるとおかしなことが色々と見えてくると思います。産業による汚染、ペット産業の内側、フードシステムなど。そういったことに対しての姿勢、つまりヴィーガンであったり写真を発表したりすることを続けたいです。自分ができることは自分がやり続けることだと思っています。 

 

<取材後記>
 写真には目で見えない世界が写るとお話しされたとき、え?と思った次の瞬間に腑に落ちました。私たちは見たいものを見て、見たくないものや意識を向けないものを見ないでいることがあるのかもしれません。目に入る物事は現実世界の一部でしかない一方、写真だとその中の全てが写るという意味で写真はフェアであるようにも思いました。

 普段はそれぞれが個人として活動されていて、金村さんは写真を2次元で扱い小松さんは3次元の空間で捉えていることも異なっています。それでも金村さんのことを小松さんが回答されたりその逆もあったりと、お互いを理解し合い作品や作風、考え方で共鳴しているように感じました。ヴィーガニズムや反キャピタリズムの考えも共有しているお二人ですが、世の中で当前とされている物事に本当はどうなのかという視点をもち人や動物、世の中の構造に思いを馳せ向き合われている姿勢が印象的でした。

 お話しすればするほど深く知ることのできるお二人の物事の見方や考えにより一層引き込まれ、またお話しさせていただけることを待ち遠しく感じています。

 川野陽子

<プロフィール>
金村修 / Kanemura Osamu 写真家
1964年東京都生まれ。1992年、東京綜合写真専門学校在校中にオランダ・ロッテルダム写真ビエンナーレに招聘され、1996年、MOMAによる「世界の注目される6人の写真家」の1人に選出される。2000年、「トップランナー」(NHK)、2001年、「情熱大陸」(毎日放送)出演。1997年、日本写真家協会新人賞、第13回東川町国際写真フェスティバル新人作家賞、2000年、第19回土門拳賞、2014年、第39回伊奈信男賞を受賞。写真集に『Spider's Strategy』『Concrete Octopus』ほか、著書に『漸進快楽写真家』『挑発する写真史』がある。
Web: http://kanemura-osamu.com

小松浩子 / Komatsu Hiroko 写真家 
1969年神奈川県生まれ。2009年の初個展以降、国内外で個展、グループ展多数。2010〜2011年、自主ギャラリー・ブロイラースペースを主催、毎月新作個展を開催。2015年、ドイツのフォトフェスティバル「The 6th Fotofestival」で発表された作品が、イタリアのMAST財団に収蔵される。2017年、DIC川村記念美術館の光田ゆり氏のキュレーションで行われた『鏡と穴-彫刻と写真の界面 vol.4 小松浩子』で、2018年、第43回 木村伊兵衛写真賞を受賞。
Web: http://komatsu-hiroko.com

<撮影協力:SO BOOKS>
NYの書店を思わせる場所で主にコンテンポラリーアート作品集を取り扱っている古書店。現代美術と写真関連品を取りそろえ、店主の小笠原郁夫さんご自身が芸術に精通されています。金村氏、小松氏の手製写真集や映像作品、小作品など写真や書籍の取扱いも。
Web: https://sobooks.jp

 Photo credit: Cédric Rolando

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11/6/2018

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